第22話 軋むベッドの上で

 今後の方針を話し合うことになり、俺は動画編集兼男優となった。なんだか大役たいやくだな。

 倉片さんは交渉こうしょうの末に主演女優(試用期間)となり、ひとまず『マスクあり』を選択した。さすがに顔出しは怖いと感じたらしい。

 そうだよなぁ……ネットに一生残るからな。体の隅々すみずみまでが全世界にさらされることになるわけだ。あんなところも、こんなところもな。


 しかし、ある程度のリスクは承知の上でやらねば稼げるものも稼げない。


 俺も男優として体を使うことになるし、面白みのない裸を大衆たいしゅうにオープンにしなければならない。今の内にムダ毛を剃っておかねばな。

 ああ――でも、伊勢崎さんによれば“覆面ふくめん&黒シャツ”でいいらしい。まずはお試しなので、と。



「俺、プロレスラーみたいなカッコでシなきゃなのかよ」

「な、なんだか強盗みたい」



 引き気味の倉片さん。その通り、闇バイトの強盗とか言われても違和感ないぞ、これ。とはいえ、実際こういう覆面をした個人撮影の男は多い。

 どうやら、伊勢崎さん的にはFC1-PPVのような撮影スタイルをイメージしているようだった。アレでいいのか。



「この後、テスト撮影してみようか」

「う……うん。その前にシャワー浴びていい?」

「もちろん自由に使ってくれ」



 シャワー室へ向かう倉片さん。

 まさか来て早々撮影できるとはな。

 前の“立ちんぼ”では不可能だったことが、今では可能になった。倉片さんも金の為なら妥協だきょうするようだ。やはり、なにかしらの重い理由がありそうだな。



 とにかく。



 伊勢崎さんも織田も別室で作業中で、まともに動けやしない。放置プレイされているので――ならば、俺が積極的に動いて仕事するしかないだろう。

 好き勝手やっていいみたいだしな。


 さきほど撮影用カメラも多数受け取った。


 撮影用スマホ、アクションカムのHoPro、高そうなハンディカメラ、一眼レフ、チェキ……配信用のウェブカメラまである。


 どれも好きに使てくれとのことだった。

 機材豊富で助かるな。


 どれを使おうか悩むな。今回はお試しだから、スマホでもいいが。なんなら、俺のマイスマホで撮影したいくらいだ。でも、それをして万が一にも流出したら大変だ。責任取れないかもしれない。


 なのでここは素直に撮影用スマホを使うことにした。今回はあくまでテストだからな。


 しばらくして倉片さんが戻ってきた。

 バスタオル一枚の姿で。



「おまたせ~…」



 恥ずかしそうに俺の目の前に立つ倉片さん。可愛すぎて発狂しそうになった。

 多分、この一枚のタオルをはぎ取れば……そこは神秘しかないのだろうな。もうここまで準備を進めてくれるとは、早くて助かる。



「じゃ、隣の部屋に行くか。そこで撮影していいと許可きょかをもらったよ」

「わ、わかった……」


 倉片さん。ロボットのようにガチガチだな。という俺も、普段以上に心臓がバクバクしていた。……撮影込みと意識しはじめたら途端とたんに気持ちがたかぶり“偉大なる息子コルトパイソンが”急速に“偉大なる不動明王アンチマテリアルライフル”へ。


 更に今日は凶悪な姿に変貌へんぼうし――“偉大なる釈迦如来ICBM”(※大陸間弾道ミサイルという意味)となった。


 もはや、俺の下半身は誰にも止められないほどに変貌へんぼうげてしまった。特定通常兵器使用禁止制限条約CCWに抵触してしまうかもな。



 隣の部屋は、ホテルのようなベッドと棚くらいしかないシンプルな中身だった。個人撮影する分には問題ないな。

 倉片さんをベッドへ座らせ、俺も隣に。やたらきしむな。

 覆面を被り、準備万端。


 まずは気分を落ち着かせた。



「撮影するけど……」

「い、いいけど、これまだテストだよね……?」

「そうだ。あくまでテストだ」

「ネットにアップしないんだよね」

「ああ。軽く編集してみるだけ。そこまでだ」


「分かった。まずはお試しだね……」


 やはり緊張きんちょうしているのか、今までとは明らかにギコチナイ。という俺も、撮影しながらヤれるのか少々心配になってきた。でも、ここまで来たんだ。ヤるしかないだろ。



「いつも通りヤろう」

「……りょ、了解」



 さっそく俺はスマホの録画ボタンを押した。……よし、スタートだ。

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