第19話 ラブホ後の……好き

 俺の中であったかつての恋心が芽生めばえつつあった。

 高校時代は倉片さんがずっと気になって仕方がなかった。顔を見るだけで胸が締め付けられたっけな……。

 けど、あの一方通行の想いも今や、ほろ苦い思い出。


 高校を卒業してもう会うことは二度とないと思っていたが、運命というのは数奇すうきなものだ。

 まさか、こうして恋愛をすっ飛ばして倉片さんと出会う日が来ようとは。というか、体の関係から始まるとは思いもしなかった。


 だけど最近は、体だけではなくなってきた気がした。



「…………ありがとう、倉片さん」

「ううん、いいの。お風呂行ってくるね」



 笑顔で答えてくれる倉片さんは、シャワーを浴びに行った。俺もあとで行くかな。今はただ余韻よいんひたりたい。


 しばらくして、俺もシャワーを浴びに向かった。


 またその場でも倉片さんは俺を癒してくれた。もう料金以上のサービスをしてくれたような気がする。



「そろそろ帰ろうか」

「そうだね。もうすっかり朝になっちゃった」

「今更だけど泊まりになってすまん」

「ううん、いいの。昨晩は覚悟決めてたから」

「え、そうだったの?」

「なんとなくね」



 倉片さんは着替え終えて準備を終わらせた。そろそろチェックアウトせねば。

 部屋を去りホテルの外へ。

 清々すがすがしいまでの青空が俺たちを出迎でむかえる。

 一緒に駅まで向かい、電車に乗って帰宅。その途中で俺は告白しようと思った。いっそ、恋人という関係になってしまいたい。そう思ったからだ。


 無理なら無理でいい。玉砕ぎょくさい覚悟だ。

 その場合は普通に体の関係だけでいい。



 揺れる電車の中で俺は倉片さんに話しかけた。



「なあ、倉片さん」

「ん?」


「ひとつ確認したいんだが、今以上の関係ってあるかな……?」



 そう遠回しに聞く。

 今の関係が壊れそうで……ちょっと怖いけど、それでも聞いてみたかった。



「…………」



 時を止める倉片さん。まるで石化したみたいに動かなくなった。



「す、すまん。突然すぎたよな」

「う、うん。ちょっと驚いた」

「無理ならいいんだ。でも……俺は倉片さんのこと高校時代から好きだった」


「知ってる」


「へ」


「よく視線を感じていたからね。キョウくん、わたしのことチラチラ見すぎ~。特に胸ね」


「…………あ」



 気づかれていたのか。俺は倉片さんの顔も好きだが、その大きな胸も好きだった。制服越しのあの凶悪なバストは男の目をく。特に形が良いんだよなぁ……。

 だから、よく倉片さんの胸で目の保養していたっけな。懐かしい思い出だ。


 ――って、バレていたのかよ。恥ずかしいな……!



「今でも見るよね」

「そりゃな。魅力ありすぎるし……柔らかいし」

「そんなに胸がいいの~?」

「男のロマンだからな。って、誤魔化してないか?」


「あはは、ごめんごめん。うん、ありがとね。キョウくんのこと、わたしも好きだよ」



 春のような笑みでそう答えてくれる倉片さん。ま、まさか両想い!?



「マジでっ」

「だって……昨晩は中に出されちゃったんだよ? もうさ、責任取ってもらうしかないじゃん」


「も……もちろんさ。でも大丈夫だよね?」

「多分ね」


 そう短く返事をする倉片さんだったが、そういえば次の駅だったな。俺はこの駅で降りねばならない。


「じゃあ、帰るよ」

「うん、また今晩もかな? あ、それかキョウくんの職場に行ってみようかな」

「え?」

「えっちな動画撮ってるんでしょ? なんか興味あるな~」

「あ、ああ。分かった。伊勢崎さんに来てみるよ」

「うん、お願いね!」



 まさか職場に来てくれる? てか、倉片さんで撮影したらバズるんじゃなかろうか。収益も凄いことになりそうだぞ。

 あのアイドル級の容姿とボディをお持ちの倉片さんなら、ワンチャンある。


 伊勢崎さんと織田もそりゃ魅力的だが、一番慣れている倉片さんが相手なら俺もヤる気も出る。


 交渉してみるのもアリだろうか。

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