第16話 なんだかんだラブホへ
倉片さんを連れ、遠くへ向かう。警察の目の届きにくい場所へ。
聖地から
駅に近い人通りの多い場所へ来た。
この辺りならもう安心だ。
「ふぅ。一時はどうなるかと」
冷や汗を
「…………こ、怖かった」
そう不安そうにつぶやく。
そうだな、一歩間違えば
「
「うん、今も心臓がドキドキしてる」
胸を押さえる倉片さん。
呼吸を乱し、今にも倒れそうだ。
「どこかで休憩しよっか」
「そうだね。ちょっと疲れちゃった」
――とはいえ、今夜はラブホに近づかない方がいいかもしれない。また警察のお世話になるのは嫌だからなぁ。
しかし、真の目的は倉片さんと幸せな時間を過ごすことだった。ヤれないのは非常に残念だが……。
「どうする?」
「ラブホ……いく?」
自ら
「近場じゃなければ問題ないか」
「たまには離れた場所にするのもアリかもね」
ニコッと天使のように微笑む倉片さんは、俺の手を握った。恋人繋ぎだった。
もうこのまま雰囲気のまま、自然のままに流されていこうと思った。その方が気楽でいい。なによりも願ったり叶ったり。
俺は倉片さんに同意した。
ちょうど駅前だ。
隣町の駅に到着。そのままラブホを目指した。
明るい道を歩いて、多くの人とすれ違っていく。俺と倉片さんは大人のお店が立ち並ぶ怪しげな通路へ
スマホのマップのナビがここを指していたので、仕方がなかった。
「な、なんだか
「そ、そうだね。わたしが
そういえば、倉片さんは普段『見学店』で一応働いているんだっけ。さすがに俺との契約だけでは生活が苦しいということだろうけど。でも、これからは
「あとで大切な話がある」
「え……」
ホテルに到着したら例のことを話そうと思った。
まずは向かう。それからだ。
◆
ラブホに到着した。受付を済ませ、そのまま指定の部屋へ足を運ぶ。さすがにちょっと
手を
今までとは違う
「こりゃ広いな。てか、めっちゃピンク……」
「そ、そうだね。なんかえっちな雰囲気だね……」
俺も倉片さんも立ち
なんだこの中世の貴族みたいな部屋。
というか、異世界に迷い込んだみたいで
「変わったデザインだね」
「うん。なんか気分とか盛り上がりそう」
いったんソファへ向かい、気分を落ち着かせることに。
「ふぅ……」
「やっとゆっくりできるね」
「そうだな。……あ、そうだ。先に大切な話をしなきゃな」
「そうだったね。それで、なんの話?」
ゆっくりとこちらに視線を向ける倉片さん。真面目な顔を向けられて、俺はドキリとした。しばらくお互いを見つめ合う。
話さなければ、俺のことを。
「実は……今日、早くも
「え。キョウくん、もう働くの?」
「大学生を辞めるつもりはないんだが、どうしても稼ぎたくて」
この夜の為に。ないよりも倉片さんの為に。
だから『動画編集者』になったことを打ち明けた。
知り合いの職場で働くこと、月収30万円以上が望めること。そして、AVを作るかもしれないことを。
ウソ偽りなく、全てを包み隠さず話した。彼女にウソだけはつきたくないからだ。
話し終えると、倉片さんは少しビックリしたようは表情をして――けれど、
「すごいじゃん、キョウくん! えらいえらい!」
天使のように
思わず涙が出そうになった。
「……っ」
「どうした、キョウくん?」
「いや、嬉しくてさ」
「うんうん。というか、面白そうな職場だね」
「だろ~。あんまりないよな、エロ動画の撮影と投稿する会社なんて」
「AVの会社みたいだね」
「ちょっと違うけど、似たようなものだな」
倉片さん食いつきいいな。もしかして興味あるのかな……?
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