第3話 積極的に攻めてくる倉片さん

 砂糖さとうのような甘さを感じる。

 脳がピリピリとして自動的に思考を停止させた。こんなふうに積極的せっきょくてきに攻めてくるとは思いもしなかった。想定外すぎておどろきと感動が混じり合う。


 今もなお、くちびるが触れ合っている。

 動作もなにもない、ただ重ね合わせるだけ。

 舌を入れようとすると、倉片さんはあわてて逃げた。……地味じみにショックだぞ、それ。


「なぜはなれる? そっちからしておいて」

「びっくりしちゃっただけ。そ、その……続きならシャワーで」


 赤面し、動揺どうようする倉片さんは俺の右手を引っ張った。

 彼女にいざなわれてシャワーの前に立つ。バスチェアに座ってと言われて腰掛けた。

 シャワーレバーをひねり、ほどよい加減と温度のお湯を出す。


 しかし、さっきはなぜキスをしてくれたんだろう。――いや、どのみちする行為ではあるけど、はじめてである倉片さんからしてくれるなんて本当に信じられなかった。

 サービスの一環いっかんなのか、それとも実は両想いだったとか。まさかな。


 相変わらずバスタオル姿の倉片さんは、まずは俺の体を洗ってくれた。その小さな右手を繊細せんさいに使い、細い指で俺の背中をでてくる。


 それだけなのにエロいと感じてしまった。“偉大なる息子コルトパイソン”が暴発しそうだぜ……。



「――っ」

「キョウくん、敏感びんかんなのかな。反応いいね」



 事実、俺は触られるだけで感じてしまうタイプだ。女の子限定で。

 というか、倉片さんの指使いがエロすぎると言った方が正しいか。はじめてにしては中々素晴らしい指加減だ。最強の指圧師シャイニングフィンガーかもしれない。


 それから体を洗い終えたものの、肝心な部分が洗浄せんじょうされていなかった。


「倉片さん、俺の“偉大なる息子ココ”忘れてるよ?」

「…………だ、だってぇ」



 目をぐるぐる回しながら困惑する倉片さん。だが、どちらにせよオープンにしなければならんのだ。

 俺は立ち上がり、彼女の前に激昂げきこうする毘沙門天びしゃもんてんを突きつけた。要は我が偉大なる息子なわけだが。


 倉片さんは俺を前にしてカチコチに固まった。


「さあ、ここも頼むよ」

「こ、これが男の人の……」


 困惑しながらも、その存在を認めた。ついに第一歩を踏んだ。

 けれど俺はどちらかと言うと眼下がんかにある倉片さんの豊満な胸の方に目がいく。谷間すげえな。

 彼女は今、腰を抜かすようにぺたんと座り、俺の偉大なる息子コルトパイソンを観察するように凝視ぎょうししていた。


 あと少し動けば口に当たるような位置できわどい。息は当たっていてくすぐったいけど。


「倉片さん、そのまま口でしてくれないか」

「え~…、いいけどぉ」

「いいのかよ」



 やはりというか、なんというかノリは本当に良いな。高校時代も俺に話しかけてくれたり、放課後に付き合ってくれたりしたことも何度かあった。友達のような感覚ではあったけど楽しかったなぁ。

 ――って、思い出にひたっている場合ではない。


 気づけば下半身にこの世のものとは思えない感触が伝わっていた。不意打ちだったゆえ、俺は一瞬で暴走モードに突入。暴発してしまった。



「――――んっ」



 あー…なんてことだ。倉片さんは俺のけがれた偉大なる息子コルトパイソンを気にもせず、丁寧ていねいすぎるほど丁重ていちょうに扱ってくれた。おかげで、ものの十秒足らずで果ててしまった。我ながら情けない。早漏そうろうとののしられても文句は言えない。


 が、しかし、俺はそれでもかまわない。今は幸福度400%で満たされているからだ。


 次は俺の番だ。倉片さんの隅々すみずみまで味わう。

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