第3話 突然の侵攻2


 さて、侵攻開始から1日も経たずに、クナシ礁の東半分が占領された。


 2日目には、リフナ軍・衛兵の抵抗も空しく、クナシ礁が完全に。


 翌日にはセントラル・パークに上陸してくることは容易に想像できた。


 そこで、国王は決断した。


 王妃と王女を逃がすことに決めたのである。


 勿論国外に。 


 侵攻3日目の朝、セントラル・パーク西のソレシアの港から逃がす予定だった。


 しかし。


「国王!ソレシアにリグリアントの軍隊が!」


 家臣の報告に目を見開く。


 リフナの予想としては、クナシ礁の占領後、東から順にリフナを占領していくものだと思っていた。


「今すぐソレシアを離れさせろ!出発地をグンデールに!」


「いえ、それが・・・」


 家臣は言いにくそうに、


「セントラル・パーク全ての港町にリグリアントの軍隊が・・・」


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 衛兵が剣を振るう姿を尻目に、王妃と王女はソレシアを出た。


「王妃、グンデールに向かうよう指示が」


 家臣の1人が王妃に告げる。


「・・・行きましょう」


 少し慌てなような、それでいて寂しそうな声で王妃。


「・・・ははうえ」


 王妃の足元から、王女が見上げる。


「・・・これから、どこに?」


「・・・安心して暮らせる場所に行きますよ」


 王女と目線を合わせ、ほほ笑む。


「・・・ほんとう?」


「えぇ、本当に」


 王女も王女なりに、この状況に危機感は持っていたらしい。


 しかし、王妃はそれを悟られまいとする。


「!隠れて!」


 衛兵の1人に言われ、すぐそばにあった廃屋に隠れる。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「おい、見つかったか?」


 どうやらリグリアントの兵のようで、ソレシアの方から駆けてくる。


 反対側からの兵士が、その兵に聞く。


「いえ、どうやらもう逃げた後のようで・・・海には出てないって言うので、恐らくまだこの島に居るのでは」


「俺たちとすれ違ったりとかはしていない。つまり・・・」


 周囲を見回して、


「この辺りに居る」


 パキ、と廃屋から音が聞こえた。


「誰だ!?」


 聞くも、返事はない。


 不審に思い、兵士数人を引き連れて確認に行くと・・・


「!!」


 武器を持った男が数人飛び出してきた。


「居たぞ!」


 その場で開戦。


 剣と剣がぶつかり、火花が散る。


 その刃が人を裂き、血が飛び散る。


 王妃と王女はというと、隙を見て裏口から逃げ出そうとしていた。


 しかし。


「ハハ・・・アタリだな」


 そこに兵士は数人待ち伏せ。


 捕えようと迫ってきた。


 その手を躱すため、人のいない方向へと王妃は王女の手を引いた。


「待て!」


 しかし、色々な要因で、躱せど躱せどついてくる。


「いい?よく聞くのよ」


 物陰に隠れたとき、王妃は王女に言う。


「私があっちに行くから、あなたはあっちに行くのよ」


 そう言って、反対側を指し示す。


「え・・・でも、ははうえは・・・」


「私は大丈夫、またすぐ会えるから」


 そう、ほほえんで、


「じゃあね」


 兵士の前に躍り出た。


 居たぞ、捕まえろ、そんな声が響く。


 王女は、王妃が行った方向と逆に足を回す。


 そのまま、どうなったかは知らない。

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