第10話 恋に堕ちるのも伊達じゃない

俺は学生寮に向かっていた。

このカイラクが言うには誰かから狙われていると言っていたが俺自身もなんとなく嫌な気が漂ってきていたことから、とりあえず学園内に戻り学生寮にある自分の部屋で一息つこうとしていた。


明日から本格的に授業が始まるというのに殺人現場を目撃してから犯人に狙われてしまっている。


俺、そしてアルネやレイに対して挑発とも取れる行為をしている。そういえばクラスが違ってしまったメアは大丈夫だろうか。

彼女も俺と同じく目撃者であることを考えて口封じのために狙われてもおかしくない。

たがどうもそいつは挑発したりと攻撃的でかつ目立とうとしている節がある。


「それっぽい人達を殺せばいいのに」


少し浮かびながらそいつは耳元から舐め回すように囁いてくる。


「馬鹿か。誰かも検討ついていないのにするわけない。」

「でもできるんでしょ?君の実力なら、さ?」

「どうだろうな。」

「ちぇ。つまんない」


この変な生き物にも付き纏われてるし全然休めていない。精神的も身体的にも疲労が皮膚から溢れ出しそうだ。


自分の部屋に着くなり、そうそう彼女は「僕の寝る場所はー?なんか...殺風景だね。つまらない」などと文句ばかりしか言わない。


「学校生活始まったばかりだからな。なのに杖盗んだり変なやつから狙われたり、付き纏われたり...」

「面白そうだねー」

「イカれてるよお前」

「イカれてるのは君じゃない?なんで相当な実力があるのに隠すの?元魔王だってバレたくないから?」

「ああ。あんな肩書は早く捨ててしまいたい。」


だけどどうだろうな。俺は捨てれそうにない。


「とりあえず僕がご飯作ってあげるよ!お腹空いたでしょ??」

「作れるのか?」


冷ややかな目線をそれに向ける。


「どういう意味?」

「忘れてくれ。頼む」

「了解ー!って何にもないんだねこの家...」

「買い出しに行くか」



この学校内には教育以外にも娯楽が用意されている。それは単に映画などと言ったものなくでもショッピングを利用することができる場所が数多だ。


俺とカイラクは買い物にうってつけのストリート。まさにメインストリートに来ていた。


「この学校って制服じゃなくても良いんでしょ?それならあ・れとかどう?」


薄気味悪い視線のその先にはバニーガール専用のコスが売られていた。


「俺があれを着て飲み物運んだりするところ想像してみたことあるか?」

「んー。ないかな。気持ち悪いし」

「じゃあ言うなよ」


小さくとも人を惹きつけるような外装をしている洒落た雑貨店に入り、まずは調理道具を固めるとしようか。


この鉄でできたフライパン、悪くないな。それにこのフライ返しもシンプルだが形がスリムで好みだ...


思ったよりも長丁場になりそうだ...


「この器とかどう?」


出されたのは春画。こいつはこれを見て喜んでいるらしい。幼稚なのかどうか。


とりあえずフォークやナイフはスタックも含めて4つずつ揃えることにした。俺とこいつが使った場合、二つ消費されるわけだから予備で2個ないとすぐ洗わなくてはならない。めんどくさい。


次は食材探しに向かい、食料品店に向かう。


「今日は何作ってくれるんだ?」

「ネズミの丸揚げか空飛ぶサーモンの生刺身?」

「ありえない。それに生刺身ってなんだよ。」

「じゃ!僕作らなーい」


最初からこうなるだろうと分かっていたので作る気は一応保っていた。危なかった。


「パスタとか食べれるか?」

「?なにそれ」


ぽっと出で生まれたような感じがする。生まれについて色々と聞きたかったが...野暮だろうか。

時間と場面が良い感じに合わさるタイミングで聞いてみようか。



材料を人通り買い終えてメインストリートから帰路に着こうとする頃には夕日が沈みかけ、暖色の灯りが周囲を照らしていた。


「僕が持ってあげようかー?」

「そのまま何処かに飛ばしそうだからNGで」


学生寮の前につくとレイとアルネが近くのベンチで座っていた。


「あの後無事だったんだな」


俺は彼とグータッチをする。


「ああ。杖も無事に売れた」

「それはそうと貴方、私達に隠していることあるんじゃない?」

「あることにはあるが...それでも俺は二人を信用している。誰だって隠し事の一つや二つは持っているものだろう?」

「ますます気に入った。

「どういうことだ?」

「ひとまずお疲れ様。これから何かあったら助けて欲しい。」

「ああ。クラスメイトでもあるんだ。相談にでも犯罪にでも乗ってやる」

「えー。この二人いる?」


最悪のタイミングでこいつが会話に入り混じる。


「変なペットでも飼ってるのか?」

「ペットじゃないよ!失礼だなぁ」

「失礼はお前だ。こいつは...ストーカー」

「違うよ!楽しいことが好きなカイラクちゃんだよ!」

「生き物を飼うときは気をつけなさいね」

「さっきからこの二人気に入らない!」


俺は二人に手を振り自室に戻る。


「やばい。暴れトマトを買い忘れた。店が閉まる前に急いで買ってくる。」


夜がしっかりとやってきていた。


焦る気持ちを前に学生寮から出ると懐かしい気分に襲われる。

それはおそらく目の前にいる女性からあのと同じ気配がするからなのかもしれない。
















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