第4話 午後8時
今日は珍しく朝日を見ることになった。
その理由としては幼馴染?と言えるのか曖昧な彼女のせいである-----
「ウル〜?あんたもネフェルタリア魔法学校いくの?」
なぜか彼女は俺のベットの横で正座して問いかけてくる。この家のセキュリティは終わってるな。
「そうだけど、てかなんでこんな朝早くに?玄関空いてたか?」
「もうそりゃあね。ドア全開」
「はぁ、夜中にどっかいったんだな。あの人」
俺はベットから起きて夢見心地から醒めなければいけないようだ。
「俺が魔法学校に行くこと、誰から聞いた?昨日話しただけなんだが」
「夜中に手紙がきたよ。ママルダさんからね」
ママルダは死霊魔法を得意としているだけあってアンデットと仲良くなりやすかった。
そしてアンデットである彼女もママルダの元へ訪れ、簡単な魔法について教わっていた。だがその家には俺がいる。同い年だし、それなりに話すようになった。
「どうせなら見学しに行こうよ。まだ入学式まであるし」
「一般公開されてるのか?」
「生徒だけにはね」
彼女はそう言うと一人で出ていってしまう。
マイペースな彼女とはあまり性格が合わなさそうだがそんなことも無かった。
何が言いたいのかと言うとお互いに気を使っていない。
後を追いかけるように最低限の服装に着替え、誰もいない家に鍵を閉めて外に出る。
すぐそこで彼女は生きたネズミが売られている店でなにやらぼんやりと眺めていた。
「ネズミ食うのか?」
「ん〜食ってもいいけど人の方が美味しいかも」
「こっち見んな」
アンデットは生きた物の方が好物らしいが食べてるところは見たことないな。
鮮度によるが刺身は好きらしい。
「お腹すいたなぁ〜」
「だからって腕を絡ませてくるんじゃない」
こいつは距離感が近いのが難点だ。アンデットでも距離感を弁える。人間そっくりなやつばっかりなのに。
彼女に連れられ、魔法学校の前まで歩いていると遠くからでも姿を現すほど大きな場所であるようだ。時計台が一際目立っており、秋が来ればあそこにドラゴンがやってきて座るらしい。
門をくぐると小さな魔導士の格好をした女の子が入学予定の人々を捌いているところだった。
「それは...あちらです!これは...回って左側です!」
「忙しいところ悪いがこの学校の見るべき場所ってどこだ?」
「どいつもこいつも!観光ガイドのように扱いやがって!」
「おい。なんで俺の時だけそんな口調なんだよ」
腹の立つ案内人だ。
「とりあえず校長室にでも行ってくれば?」
「んーおけ」
「なんで校長室だよ。普通グランドとかだろ」
彼女は校長室がどこにあるのかも分からないのに歩き始めてしまう。
校内は古く伝統ある作りになっており、少し表に出ている汚れも何故だか歴史として語りたくなるような趣をしていた。
大広場では人々がベンチに座り談笑し、楽しそうなひと時を過ごしている。
「案外悪くないな。ここ」
「でしょー?ここにはアンデットも人間も竜人もなんでも来るんだよー」
遠くの窓からママルダが廊下を歩いている姿が見える。
「あの人もこの学校に来るのか?」
「さぁ?でも多分だけど死霊魔法使える先生がいないから代わりとかじゃない?」
「それなら嬉しいだろ?彼女から直々に高度な死霊魔法を教われるんだから」
「ウルは幼い頃から教わってるでしょ?いいなぁ」
「そんなことないぞ。」
彼女が夜な夜な家で実験しているのを見ている俺からすれば死霊魔法を学びたいとは思わない。食べ物探してたら誰かの爪が出てきたことあるか?俺はある。
「あれお姉ちゃんかも。」
圧倒的なオーラを醸し出しながら中庭を歩いている人のことだろうか。
彼女と同じく白髪にアンデットの特徴であるグレーの肌。そして赤い目は威厳を感じ取れた。
「お姉ちゃん?」
「なんだ。お前も来ていたのか。ん?彼氏でもできたのか?それとも食料か?」
「彼氏でもなければ食料でもない」
「忘れてくれ。悪いジョークだから」
意外と見た目とは違って愉快な事を好む性格なのかもしれない。
「私の名前はアリナ・フェレス。妹のメアをよろしくな。」
そういえばこいつ、メアって言う名前だったな。メア・フェレス。初めて家柄を聞いた。
「俺はウル・フリッシュだ。」
「今年から入るのか?」
「ああ。妹さんと同じくな」
「ではよろしく頼む。何かあったら頼ってくれ。それと妹が人を食べないように注意してくれ」
「笑えない冗談はよしてくれ」
「あははは。悪かったな。お前ら、夜までいるか?夜になればライトアップされて綺麗になるぞ?それに学食が食べられる。」
「学食?!?」
妹の方は大きな声を出して興奮しだす。
そんな大きな声初めて聞いたぞ。
「ああ。二人で食べてみてくれ。」
彼女は優しい笑顔を残したまま校舎へと足を運んで行った。
「学食、食べない?」
「まだ15時だぞ...夜までまだまだ」
「図書館の場所知ってるけど?」
「そこで時間潰せってことか?」
「できるでしょ?」
「もちろん。」
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