第25話 ウサギさんだぁ〜〜〜〜!

「オウ! ようやく俺様の正体に気づきやがったな! おせぇ〜〜ぞ! ウスノロ! こんなに近くに居るっていうのによ! 夢の中でおっ死んじまったって言い訳できないぞ! 小娘!」



 それに、そのウサギさん——動いているの! 腕を突き出して、わちゃわちゃしてたんだけど、挙動が凄く可愛らしい。お口は凄くワルワルさんなんだけどね。



「大体よ! 注意力が散漫なんだよ! もっとよく探しやがれ! 声の正体が足元にいるとか、ぜってぇ〜〜固定観念から思いつかなかったんだろ? ここは夢の中さ。何が起きてもおかしく…………ッ!? ってオイ! 何する離せよ!!」



 ——ッふふふ! ウサギさん!!


 でも、お口が悪いことなんてどうでも良くなっちゃった! 私、気づいたらそのウサギさんを抱きしめて抱えてた。

 

 ヒョイ——ってね。


 ——私、この子知ってる!


 そして、確信したの。このウサギさんは私のぬいぐるみだ。いつも枕元に置いている私のお気に入りのピンクのウサギのぬいぐるみ。



「離せよ! 離せ!!」



 ウサギさん。ジタバタしてたけど、そんなことしたって無駄だもん。抱き心地はいつも通りでピッタリフィット。間違いなく私の相棒であるウサギさんなのだ。

 私、夢を見るようになってから、ずぅ〜〜と悪夢だって、この夢の事思ってたけど……初めて、いい夢だって感じたの。だって、私の相棒が立って動いておしゃべりしてるんですもの——これはきっといい夢に違いないでしょう?



「オイ! いい加減にしろ! 結菜!!」



 ほら、ウサギさん。私の名前まで知ってる。間違いない。私のウサギさんだ!!

 ウサギさんは確かに私の事を結菜ゆいなって呼んでくれた。凄く嬉しかった。



「オイ。なにニマニマしてやがる。俺様に見えてなくとも分かってるからな? さっきからテメェ〜〜のノドがコロコロ鳴ってるんだよ!」



 ——わぉ! それは、いいお知らせ! 


 私、喋れないけど、ノドは鳴らせるみたい? もしかしたら、喋れるようになるきっかけになるかもしれないぞ。



「いい加減にしろ。あまりギュムギュムするとシワになるだろうが!」



 む! それはいけない。折角の可愛いウサギさんがシワシワになっちゃう。また、柔軟剤の海で溺死させる羽目になるし、ここは我慢して解放してあげよう。名残惜しいんだけど……



「——ッチ! ようやく離しやがったな。クソ。ハラワタが変な位置に動いてやがるぜ!」



 床に下ろしたウサギさんは、改めて二足歩行で立って歩く。身体を捻って居心地悪そうにしてたけど、ちょっと強く抱きしめすぎちゃったかな?


 それにしても……


 ウサギさん、舌打ちまでして本当にお口がワルワルさんだな?



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