第21話 何度も見る同じ夢には強いメッセージがこもる

「基本的には、体験したこと、目にしたことが断片的に現れて、頭の中で物語になったモノが夢なんだけど——結菜ちゃんぐらいだと、絵本や漫画、ゲームからも影響を受けるかもしれないかな? それと、想像したこととか、ふと見た映像とかも組み合わさって夢で見るかもしれない。だから、『見たことない!』って現象はそこからくるケースがあるんだけど……結菜ちゃんの場合はおそらく違うかな?」



 ふ〜〜ん。浅見先生って右目に泣きぼくろがあるんだ?


 今日、初めて知ったまさかの事実。もう、先生が何を言ってるかさっぱりだったから、ジィ〜〜とお顔を眺めてた。


 すると……


 あら不思議! なんてことのない新しい発見だ!!


 何気なく観察をする最中、忘れちゃいけないのが相手の目線を見て、『うんうん!』って頷くこと——先生のお話しはほとんど理解できないけど、これで私はちゃんと理解しているだって——そう見えるはず。間違っても聞き返しちゃダメ——その答えもきっと長くなるだろうから。



 (ぐぅ〜〜!)



 私の腹時計さんも『待てない!』っていってる。

 先生、ごめんなさい。私は腹時計さん優先なんだ! このままやり過ごさせてもらおう!



「うむ……もう、コレ言っちゃおうかな?」



 どうしたんだろう。先生は急に真面目な顔をした。



「結菜ちゃん。実はもう気づいてるよね」


「……?」


「喋れない原因とか……周りが隠してることとか……」


「——ッ!?」



 ——あぁ……これ、ダメだ。無視できない真面目な話だ。


 すぐそう気づいてしまった私……ゆっくりと頷いた。

 すると……浅見先生は『やっぱりね』って言いたそうに、1つ、ふぅ——っと息を吐くと、再び真剣にこっちを見てきたの。



「そうか、それで結菜ちゃんは……。それで、その隠されてる事実については知りたいって思う?」


 

 私はプルプルと首を振った。


 だって……



[わたし。ママをこまらせたくない。だから、きかない]


「あぁ……内緒にしてたから。聞くと困らせるって思ったのか?」



 頷く。



「結菜ちゃんは優しい子だね。ふふふ……」



 だって、聞こうとしても教えてくれない。泣きそうな顔するんだもん。こんなこと、聞けるはずがない。



「結菜ちゃんのママは、結菜ちゃんを困らせようと思って隠してるんじゃないんだ。私も知ってるけど……意地悪したいわけじゃないの。結菜ちゃんは忘れてるんだけど……辛い記憶だから急に思い出さないようにしてたのよ」


[うん。わかってる]


「知ってたの?」


[そんな、きがしてたの]


「結菜ちゃん。お利口なのね」



 私の記憶がないのは、みんなが隠している“とある事件”が原因だろう。それは薄々分かっていたんだ。


 でも……聞かない。


 みんなを困らせたくないから——それに『教えない』ってことは、おそらく理由がある。大人がみんな『教えない方がいい』って思ってるんだったら……私は聞かない。



「で、話は戻るんだけど……」



 で、先生は話を続ける。だけど、今の浅見先生はさっきに比べるとこの時の表情は晴れてる。



「実はね。同じ夢を見るっていうのは強いメッセージが隠されているの。それも夢の状況によってそれぞれ違う。例えば『追われる夢』を見るのは『余裕のなさ』を暗示してたりとかね。そして、『怖い夢』を何度も見るのは『危険が迫っている』警告とも言われているわ」



 ふぅ〜〜ん。そんな意味もあるんだ。

 何度も同じ夢を見るのはおかしなことなのかと思ってたけど、意外とあるものなんだな。



「それを踏まえて……『夢』は人の記憶からできてるって言ったと思うけど——断片的なピースを嵌め込んでできたストーリーが『夢』っていうところは変わらないんだ。でね——結菜ちゃんの毎日見ている夢だけど……あの赤い……靄……?」


[うん! ◯ック!!]


「うん……そのぉ〜〜◯ックは——もしかしたら、結菜ちゃんの忘れてる記憶の中にいるのかもしれない」



 ……およ?! 私、知らず知らずのうちに◯ックに会ってたみたい。


 手に長いなたを持った殺人◯ックに……『この赤い毛は、狩った人間の血で染まったものですぞ!』って——?


 ——うわぁ〜〜ナニそれ、すごく怖い!







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る