第20話 わたし。ききたいこと。ある。
カウンセリングが終わったから、部屋を出て待っていてくれてるママのところに戻ろうとしたんだけど……
浅見先生は突然、胸の前で軽く手を合わせて『パン!』と音を出す。
「じゃあ、カウンセリングは終わるんだけど……結菜ちゃん。他に先生に質問したいこととかある? なんでも聞いて!」
思わず私、その音に意識がいって先生と目線が合うと、これを聞いてきた。私、ビクッてしちゃった。
う〜〜ん? 質問? 特にはないんだけど……ここで何も聞かないのは失礼かな? 折角、やる気満々とびきり笑顔で聞いてくれてるんだから、簡単なことでもいいから聞いてあげようかな?
でも……聞きたいことかぁ〜〜?
聞きたいこと……聞きたいこと〜〜?
う〜〜ん…………あ?
——それなら!
[ききたいこと。ある!]
「——お! なにかな? 聞いて聞いて♪」
ちょうどいい聞きたい事があった。
[わたし。まいにち。ゆめみるの!]
「……夢?」
そう、毎日見る同じ夢のこと。一度、お医者さんに聞いてみたいと思ってたんだ。今朝は何故か見なかったんだけど……これってどういうことなのか。カウンセリングの先生なら何かわかるのかなと思っておもいきって聞いてみる。
私は、毎日同じ夢を見ることを浅見先生に伝えた。
知らない学校。
知らない風景。
そして追いかけてくる赤い人。
なんとなくだけど……頑張って説明した。
「ふむふむ……」
[せんせい? これってどうなの? わるいこと?]
すると、浅見先生は少し考えて俯いた。その姿に私は少し怖くなってしまう。
——これは何か悪いことなのかも!?
そう思ってしまうのは仕方のないことでしょう?
「ん? ——あ!? ごめんなさい結菜ちゃん! 私、怖い顔してたかな? 不安だったよね。怖かった」
私——ゆっくりとコクっと一度頷く。
「うわ〜〜本当にごめんなさい結菜ちゃん?!」
私、どうやら不安な顔で先生を見てたみたい。顔を持ち上げた浅見先生はギョッと驚いて謝ってきた。私、先生を困らせちゃったみたい。
だって……不安だったんだもん。顔に出ても仕方なかったんだもん。
「う〜〜んとね。正直、どう説明していいか悩んでたの」
「——?」
私は首を傾げる。
「結菜ちゃん。寝る時に見る夢って何でできてるか知ってる?」
[……きおく?]
「うん。そうなの——よく知ってるわね結菜ちゃん! 簡単に言ってしまうと『ドキュメンタリー映画』を見ていると言えば分かり易いかな? 自分が主役のね。基本、『夢』を形作っているのは自分の記憶よ。断片的な記憶のかけらの集合体——それが私達の見ている夢」
——うわ。難しい話のヤツだ!? 私、こういうの苦手!
私は興味のあることはなんでも調べるだけど……どうでもいいことを聞かせられるとチンプンカンプンだ。
別に私……そこまで『夢』について聞きたかったわけじゃないんだけど。
簡単に『良いのか?』『悪いのか?』って聞きたいだけだったんだけどなぁ。これを『墓穴を掘る』っていうんだろうか?
(ぐぅ〜〜!)
どうしよう。お腹空いてきた。
この後、ママとファミレス行く予定だったんだけど……オムライスとプリンはお預けかな?
私、喋れないから先生の話『やっぱいいです!!』って言って止められないし。
うぅ〜〜……我慢、我慢……
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