第15話 殺人現場は一枚のお皿

 目が覚めると私……逆さまだった。


 ベットの上から頭から落ちて、両足だけ上に乗っている。とっても恥ずかしい。こんなの女の子らしくない。

 この時、私の心臓はバクバクだった。昨日の夜と同じ、2日続けての全力疾走だ。


 とりあえず……





 ムギュッ〜〜!!





 ベットのヌイグルミを掴むと力一杯抱きしめる。



 それは興奮する血液を抑えるため。



 それは恐怖を払拭するため。



 それは怒りの矛先にするため。



 それは夢を忘れさせるため。



 それは女の子をするため。



 それは……



 ア イ ツ を わ す れ さ せ る た め ——



 だって……



 ◯◯◯◯◯なっちゃうんだもん……





 






 …………ふぅ〜〜。



 どれぐらい経ったかな?



 しばらくウサギさんに抱きついていたけど、やっと落ち着いた。ごめんね。シワシワになっちゃった。


 今度、フワフワになるおまじない……してあげるね(柔軟剤の海にドボン)。


 私は今朝と同じような体勢をとっていた。つまりベット脇を背もたれにしてボォ〜っと……これが放心状態っていうのかな? 

 ただ、今朝との違いは相棒(ヌイグルミ)がいてくれた事……昔からずっといてくれるピンクのウサギさん。

 私は相棒を抱えたまま立った。そして、ゆっくりと勉強卓を目指す。



——13:21——



 そこにある一枚のタブレット端末——私の指が軽く振れると、その機械仕掛けの板は、お昼は既に過ぎてしまったという事実を私に伝えた。



 (ぐぅ〜〜!)



 それを見てしまうと急にお腹がすいてきた。私の腹時計も私のことを笑ってるみたい。



 夢のこと。これからのこと。考えたいことは多々あるけど……とりあえずは……


 ——お昼ご飯……オムライス食べよう……


 あまり相棒を自室から出すことがない私だけど、今日は一緒にリビングを目指す。出さない理由は、図体が結構大きいから。私、両手で抱えてるんだ。階段降りる時キツそう。でも、しかたないじゃない。とっても心細かったんだもん。


 

 どうか私を見守っててね。ウサギさん。

 








『——ッパン!! ……チン!!』



 謎の破裂現象を起こしたオムライス君。電子レンジから見るも無惨な彼を出す。皮膚(たまご)が弾けて、血塗れ(ケチャップライス)だったけど、私は追い血液(ケチャップ)をして殺人現場の完成……死因はマイクロ波の吸収によって内臓破裂ッ——と……



 ……私、オムライスでなんでこんな遊びしてるんだろう?



 どう思う? 相棒?



 うん。だんまりか……黙秘権ですか……そうですか……



 リビングルームの背の高い大きな四つ足テーブル。温めたオムライスを大きなミトンをした私はゆっくりと卓上にそれを置いて席に着く。

 隣にはあらかじめ相棒を座らせておいた。少しは気が……というよりも、寂しさが紛れるかと思って座らせたんだ。案外悪くない。ピッタリフィット。

 そして、オムライス君はズタズタの惨たらしい状態だったけど……君の死に様は悪くない。良いお味だった。さすがはママ。カリッとした輪切りソーセージがとても良いアクセント。



 ——ケップ……お腹一杯。



 腹が減ってはなんとやら……お昼ご飯を食べ終わると、身体のこわばりはすっかりとなくなっていた。

 


 さて……



 台所に空の殺人現場お皿を置いて、ジャ〜〜っと、水につけておく。これは後で証拠隠滅皿洗いするとして……まずはシャワーだ。

 また、冷や汗ベトベトで気持ち悪かったから……これを流してリフレッシュするところから始めよう。



 ——ウサギさん。ちょっと行ってくるね。



 『夢』についてはそれから考えよう。

 

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