第9話 あなたは一体誰なの?

 夢を見る様になってから半年——



 ついに、あの靄は正面玄関の扉の前まで来ている。


 私は物陰からゆっくり覗いてそれを確かめたんだ。近づいてマジマジ見るなんてことは一度もしなかった。だって怖いんだもん。私、女の子なんだよ。果敢に飛び込んでいく勇気はないよ。

 離れた場所からずぅ〜〜と観察をしてると、あの靄は人なんじゃないかな? って最近思う様になったの……いや、よくはわからないんだよ? でもね。輪郭が人っぽいな〜〜なんて思ってね。一体誰なんだろう。友達は夢は記憶から出来てるって言ってたし……


 ——心身の内部的? 情報がぁ? 寝てる間に……写し〜〜だされとぅぇえ??


 と難しい話をしてたけど、なんて難しいことはどうだっていいの! ふみゅ? 私『メカニズム』なんて難しい言葉よく出せたな。うん! 私って、もしかして天才〜♪


 でも……夢が私の記憶なら、あの靄は一体誰なんだろう。私の知ってる人なのかな??



 アレじゃわからないよね。モヤモヤなんだもん。


 



 それから……



 何日と夢を見続けたけど、あの靄は入り口に立ち往生。


 ……あれ? もしかして中に入って来れない??


 きっとそうだ。だって、私は外に出ようと何度も扉を開けようとしてみたんだよ。でも決まって開くのは小さな勝手口だけ。あの靄は入り口を開けられないんだ。だからあそこで、立ち尽くしてるんだ。


 ——ふふふ……いい気味ね♪ 


 最初は怖かったけど、入って来れないなんて少し可哀想? だって、外は炎天下なんだよ。あの靄はよくあの中にいられるよね?









 さらに数日が経った——



 あれ? 居ない??



 ふと入り口を通りかかった時に気づいた。赤い靄が居なくなっていた。ついに諦めたのかな?

 試しに2階の教室から外を見回してみたんだ。でも、靄は見当たらなかった。校庭にも、杉の木の下も……どこにも……


 ——まぁ、いいや♪


 靄もきっと暑さにやられて涼みに行ったのよ。我慢の限界だったのね。

 さて、そんなことよりも私は遊びに行こうかな?

 最近は、恐怖なんて忘れてね。誰も居ない学校でやりたいイタズラランキングを片っ端から試してるから私は忙しいんだよ♪









 さらに……さらに数日——



 ついに、その日が訪れる。





 ——ガシャァーーーーア!!!!





 追いかけっこの始まりだ。





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る