第6話 初夢の一歩

 校庭にある大きな杉の木——


 その袂に赤いモヤがかかってたの。長細い楕円形でノイズが走った様におぼろげ……って言えばいいかな?


 何かな〜〜ってよく観察した。でもその正体には気づけなくて、直ぐに興味を失ったんだ。だって『夢』の中なんだよ? 何がいたっておかしくないじゃない。クロワッサンが宙に浮いていて、話かけてきたって不思議じゃないでしょう?


 ——ん? 何でクロワッサンかって? 


 それは、私の大好物だから! 特に甘めなのが好き! 

 だから、夢に出てきてくれたら、それはきっと良い夢になる。「僕を食べないで!!」って言われたって食べちゃうんだから♪


 と——私の好物はどうでもいいの。どうせ、私の毎日の『夢』には出てくることはないのだから……


 それで、私は靄を無視した。ちょっと気にはなったけど学校探索を始めた。季節はどうやら夏で、外では蝉が鳴いてる様な気がした。抽象的な表現にとどめているのはここが『夢』だから。暑さを感じたり、音が聞こえてくるのは可笑しいでしょう? でも、なんだかそんな気がしたんだ。凄く不思議。

 それで、学校は古い木造二階建て……一通り見て回っても私の知る学校というモノがそのまま置き換わっただけで、特に面白いモノはなかった。


 私のワクワクを返して欲しい。もう!


 ——う? でもこれ…… こんな事で自棄になる私……凄く子供っぽい?





 それでそれで……





 外に出てみようと試したら、正面の入り口は開かなかった。ついでに廊下の窓も……外に出る手段は全て封じられて、私は学校に閉じ込められちゃった。

 そうして、手当たり次第、外に出る方法はないのかな〜〜って探していたら唯一、2つある階段の内1つ——階段脇に目立たない細い通路があって……その奥にある、勝手口だけが開けることに成功したんだ。


 いざ、外の世界へ〜〜♪


 と意気揚々と足を踏み抜いた私だったんだけど……


 



 そこで目が覚める。




 毎日、決まってね。



 外の世界を見てみたかった私は、ちょっとムッとして起き掛けでぬいぐるみに八つ当たりしたのは内緒。ムギュ〜〜としてジタバタしたところをママに見つかって怒られちゃった。『ホコリが立つでしょう!』って——テヘヘ……次は気をつけよう。





 次の日の夜——





 また同じ夢。


 2階の教室。廊下の左右からちょうど真ん中の教室。


 私はそこの窓際、黒板を前として、前から3番目の机に着席して目を開ける。


 『あれれ〜同じだぁ〜』って既視感に苛まれながらも私はすぐ夢を受け入れた。


 右の机には蝉の死骸。左には外の風景。蝉がうるさく鳴いている。


 そして……



 あれ? またいる……



 杉の木の下には赤い靄が



 ん? ??



 不思議な感覚だった。その正体を知らないし、見当もつかないのに……



と……



 そう表現してた。まるで生き物だと……断定した様に……



 あぁ……あれは……







 ◯ ◯ ◯ い い の に……ね?







 って、思うんだけど……



 それでね。



 ——ん?



 私が、その赤い靄を捉えた瞬間、なんだろう? 変な感覚がした。


 これは、まるで……



 視線?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る