第5話 またこの夢……

 ジワジワ〜〜ジワジワ〜〜!



 気づくと、私の耳には蝉の声が聞こえて来ていた。


 知らない黒板……


 知らない勉強机……


 知らない教室……


 横の窓からの知らない風景……


 知らない学校——


 いや……『知らない』とは少し語弊がある。私は知ってるはずだ。だって毎日この『夢』を見てるんだから。変わることのない同じ『夢』を。



 目を開けると……私は1つの机に座っている。等間隔で並べられた教室の机。窓際の前から3番目の机で、私はパジャマ姿ではなく決まってセーラー服を着ているの。緑のスカーフのセーラー服。中学も、高校も、ブレザー制服なんだけど……人生初めてのセーラー服は『夢』の中で経験したのだ。

 とりあえず右隣の机を見る。すると、そこには1匹の蝉の死骸が置いてあるの。毎日一緒でね。それは羽を抜かれて置いてある。私にとっては見慣れた光景だから「はいはい、また置いてあるのね〜」って感覚。もう見飽きちゃった。

 始めは「ヒィ! 虫!?」って驚いてたんだよ? ちゃんと女の子してるから心配しないでね?


 そして、今度は左を見る。そこには窓があって外の風景が見える。手前が校庭、奥には田園風景、遠くには緑いっぱいの山しかない光景。完全に田舎の学校だってことぐらい必然的にわかってしまう。

 校庭の端には、存在主張の激しい大きな杉の木があるんだ。


 でね……


 私がその木を話に上げるのには理由があってね。


 初めて、この夢を見た時……


 当然、外の景色には注目したんだ。あまり田舎の風景を見たことなかったし……興味本意が大きかったんだ。


 で……この時——気づいちゃったの……



 の存在に……

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