第6話

何をしているのだろう。

こんなこと、間違いなく余計なことだ。

無駄なことだ。

これは博士の仕事ではない。

なら手伝う必要なんてない。

放っておけばいいのだ。

そうすれば仕事の出来ないアレは処分される。

そうすれば博士も余計なお世話から解放される。

毎日食事を摂る必要だってなくなるし。

羽根伸ばしだとか言って無理矢理外に連れ出されることも。

おかしな娯楽(ゲーム)を教えられることも。

他人への接し方を口うるさく指導されることもなくなる。

風呂だって入らなくていいし。

毎日睡眠する必要だってない。

人間じみた生活をたたき込まれることがなくなる。

いいことづくしじゃないか。

それなのに何故。

「正義も、悪も」

博士は歩いている。

「人間も、その世界も」

白衣を翻し、誰もいない街をゆく。

「わたしも」

火の手が上がる街を、進んでゆく。

「みんな」

壊れてしまえ。

死に絶えた街の中心で、博士を呼ぶ声がした。

立ち止まり振り返るとそこにはハルジがいた。

彼はいろいろな感情がごちゃ混ぜになった表情をしていた。

呼び止めたはいいが、言葉が出てこない。

だから。

博士が代わりに声をかけてやった。

「救ってみせろよ。正義の味方」

わたしが壊したこの街を。

わたしが壊すこの世界を。

その日以来、ハルジは研究室(ラボ)に姿を見せないようになった。

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