第97話 最後の宝玉



 水神龍の七宝玉集めを始めたオレは、広い遺跡の中を泳いでひたすら探し回り、時には宝玉を守る中身のない鎧の騎士を倒し、時には宝玉を持って逃げまくるエビを追いかけ、時には宝玉を囮に使って襲いかかってきた巨大なタコを返り討ちにし……



「よし、これで6個目だな」



「さすが兄弟! 最高だぜ~」



「誰が兄弟だよ」



 最初の宝玉を沈没船で手に入れて以降、新たな宝玉を手に入れる度にどんどん入手難易度が上がっていって、つい今しがた手に入れた6個目に至っては、丸1日探してようやく手に入れることが出来た。

この遺跡に来てから既に3日ほど経過しており、おそらく人魚の祝福の効果もあと半分ちょっとといったところだろう。

ちなみに日数の経過はこの喋るカメが教えてくれた。



「急いで残りの一つを見つけなきゃな……」



 とは言っても、もう遺跡の中はほとんど探して回ったんだよな……このエリアからは出ないと思うし、あとは砂の中に埋まってたりとかか?



「兄弟、メシの時間だぜ~」



「おお、ありがとう……って、この間倒したタコじゃねえか」



「まだまだあるぜ~」



 カメから貰ったタコの足を齧りつつ、最後の宝玉を探し回る。

ちなみにこのタコの足、なにも味付けしてないのに謎の塩味があって意外と美味い。

ちなみにこれは人魚の祝福の効果なのだろうか、意識的に水を飲もうとしない限り勝手に水が口の中に入ってくることも無い。なんとも不思議な感覚だ。



「もぐもぐ……さすがにそろそろあったかいもんが食いたくなってきたな……」



 水が飲み放題なのは良いんだけどな……炎神龍の岩窟はダンジョンの特性上、魔物も熱々だったけど、逆に冷たい水が飲めなかったし。

やっぱ極端なのはダメだな。ちょっとイグニッションフレイムでこの辺お湯にして飲もうかな。



「よし! 腹ごしらえもしたし、気合い入れて残りの1個探すかあ!」



「兄弟ファイトなんだぜ~! それじゃあ……」



「ん? どうしたんだタートル」



 ミシ……ミシミシ……



「お?」



 ミシミシミシ……バキバキバキバキ……!



「おお!?」



 宝玉を6個はめ込まれた喋る巨大カメがいきなり手足を引っ込め、甲羅がバキバキと変形を始める。

な、なんだ? 何が起きているんだ?



 バキバキバキバキ!! ゴリゴリゴリゴリ!! ガッシャーン!!



「な、なんだ、お前……?」



 しばらく謎の変形を続けたカメは、はめ込まれた6個の宝玉を関節のように繋げたヒト型ロボットのような姿に変身した。

なんだこいつ、もしかして超生命体か……?



「さあ兄弟、ミーを倒して水神龍の封印を解いてくれなんだぜ~!」



「マジかよ」



 ラスト1玉はどうなったんだよ。



 ―― ――



「はっはっは~! 最高だぜぇ~!」



「うおっ! なんだそのロケット! 貝殻か!?」



「どんどんいくぜ~!」



 変身したカメ野郎が撃つ攻撃を避けたり受け流したりしつつ、どうやってあいつを倒そうか思考する。

人魚の祝福の効果があるとはいえ、さすがに水中だと動きが制限されるから戦いにくいな……



「イグニッションフレイムの飛距離もかなり落ちるから、近づかないとうまくいかないしな……」



 炎系統と相性の良いオレの魔力だが、やはり水中ということでここでは威力が落ちてしまう上に、魔力の消費量も多い気がする。

やはり水タイプに炎タイプは不利だな……



「こうなったら、物理でいくしかねえな」



 しばらく戦いながらアイツの様子や言動を観察した結果、どうやらあいつを倒すには関節代わりに稼働している6つの宝玉を全て破壊する必要があるらしいということが分かった。

せっかく苦労して集めた宝玉を自分で壊すのか……穴を掘って埋める作業をひたすらやらされる囚人にでもなった気分だ。



「はっはっは~! そんなんじゃおれっちは倒せないぜぇ~!」



「これからだよこれから!」



 おそらくコイツが水神龍の最後の門番、炎神龍の岩窟でいうところの地下255階層にいたインフェルノゴーレム枠という事だろう。

この装甲の硬さ、なんだか懐かしいぜ。



「よし……それじゃあ久々に気合い入れていきますかねっ!!」

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