第94話 泉に潜むモノ



「ふう……よし、到着だ」



 再び険しいジャングルロードを超えて、オレはハイドラ島の中心部、水神龍の音泉までやってきた。

オーケアニスから言われた人魚の祝福も受けてきたし、今回は準備万全だ。



 『ホムラさん、人魚の祝福を授かったのですね……』



「うわっ! び、びっくりしたー……」



 前回来たときと同じように、どこからともなくオーケアニスの声がぼんやりと聞こえてくる。



「オーケアニス、言われた通りマーメイド族の巫女からの祝福を受けてきたぞ。これであなたの元へ行けるのか?」



 『泉に入ってください……』



「わ、わかった」



 オーケアニスの指示に従って、泉の中に入っていく。



「うわ、結構深いな……水着で来てよかったぜ」



 『濡れた衣服が肌に張り付く様も扇情的で良いものです……』



「良くないだろ」



 どうしよう、会いに行くのやめようかな。



 『それでは、そのまま泉の中で少しお待ちください……』



「ここで待ってればいいのか」



 泉の中央に向かうにつれて、どんどん水深が増している気がする。

ん、水位か? まあいいや。

これ以上進んだら足が付かなくなりそうだ。



 『ホムラさん、これからあなたの持つ鍵を使用して、あちきの棲む湖底遺跡へとご案内します……少し驚かれるでしょうが、水の流れに身を任せてください……』



「あ、ああ……」



 なんだろう、トイレみたいに渦が発生してそのまま泉の中へ引きずり込まれるとかだろうか。

ていうかオレ本当に水中で活動できるようになってるんだよな?

1回どこかで試しておけばよかったな……



 ブク……ブクブク……



「……ん? 泉の中に、なにか……」



 泉の中央付近に波紋と水泡が発生し、それがどんどん大きくなっていく。

ちょ、ちょっと不安だな……



 ブクブクブク……ブクブクブクブク……!!



「な、なんだなんだなんだ……?」



 ザッパアアアアアアアアアアアアン!!!!



「ギュボオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」



「うわああああああああああああああああああッ!?」



 突如水中からウナギのような巨大な魔物が現れた。



「オ、オーケアニスさん!! コイツ倒していい!?」



 『水の流れに身を任せてください……』



「そんなこと言ってる場合じゃねえんですが!?」



「ギュボボボボボボボオオオオオオオオオ!!」



「うわあああああ食われるうううううううッ!?」



 魔物が歯の付いたホースみたいな口を開けると、そのままオレを飲み込もうと襲いかかってくる。

ウナギっていうか、ヤツメウナギに近いか……? 正直めちゃめちゃ怖い。



「これ大丈夫なんだよね!? 本当にこのままで良いんだよね!?」



 『大丈……ホムラさん、その……水の流……身を……て……』



「電波悪いなおい!!」



「ギュッボオオオオオオオオオオオオ!!!!」



「うわあああああああああああああッ!?」



こうしてオレは、抵抗できないまま謎の巨大ヤツメウナギに飲み込まれてしまった。



 ……。



 …………。



「……ふむ。どうやらホムラさんは無事に、あちきの領域にたどり着くことが出来たようですね」



 さあホムラさん、ここから先はあなたの腕の見せ所。

あちきのいる最深部までたどり着き、封印を解いていただけることを願っていますよ……



「クルースニクが認めたその実力、しかと確かめさせていただきましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る