第86話 マーメイド居住区(2回目)
「ふう、やっと解放された……」
ワニワニ族のドンキー襲撃からの撃退後、オレは死んでしまった護衛の代わりをしながら船に乗って無事にハイドラ島までたどり着くことが出来た。
しかし、そこからドンキーや護衛の冒険者二人の死体を島に運び、マーメイド居住区に設置されているギルドの連絡所のような所で何があったかの状況説明をしたりしてかなりの時間を拘束されてしまった。
「まさか火葬までやらされるとは……」
死体をどうするかという話になり、『鳥葬か湖に流して魔物に食わせよう』とかいうのでさすがにそれは……ってことで、オレがイグニッションフレイムで燃やして埋めた。
どうなんだろう、魔物に食わせた方が自然的で良いのだろうか……異世界の常識はまだまだ分からないことが多い。
「でもそのまま埋めたら腐敗して水が悪くなるかもしれないし、そしたらマーメイドたちは人間以上に影響あるだろうし……」
常に下半身の鱗部分は水中に入っているマーメイド族にとっては、水が汚染されるのは良くないだろう。
……なんだろう、この衛生観念はオレが元日本人だからってのもあるのか?
「それにしても、ワニワニ族か……」
水中を移動できる亜人族もいるんだなって思ったけど、マーメイド族もそうか。
ああやって水の中から急に襲われるとやはり危険だな。
魔力を集中させて炎を纏った腕を水に浸けておけば周囲が熱湯になって近づけなくなるか……?
「おうボウズ、お疲れさん」
「あ、船長さん」
調査を終えて連絡所から出ると、船を掃除している船長さんに声をかけられる。
血の汚れは中々落ちないって聞くし、大変そうだな。
「まったくついてないぜ。昼過ぎにはシグレ行きの船を出さにゃいかんのに護衛がいなくなっちまった」
「あーそっか、それじゃあ船出せないっすね」
「ハイドラ島に護衛を引き受けてくれそうなヤツが滞在してないか調べてもらってる最中さ。どうだボウズ、アンタが帰りも乗ってくれればそれだけで問題は解決するんだが」
「すいませんが、オレは数日滞在する予定なんで今日は無理っす」
このままシグレにとんぼ返りしたら、船代払っただけでなんの意味もねえからな。
いや、そういえば途中からやった行きの護衛代を貰ったからむしろ金は増えてんのか。
「その齢でハイドラ島に入り浸ってるようじゃ、将来が心配だぜ」
「いや、人魚新地に行くわけじゃないから……」
たしかに、ハイドラ島に観光に来る人の多くは歓楽街の人魚新地が目的なんだろう。
一緒に船に乗ってたお兄さんもそんな感じだったし。
ただ、あのお兄さんはドンキー襲撃を目の当たりにしてそういう気分を削がれてしまったのか、なんか観光だけして帰るって言ってた。
「まあそれなら仕方がねえや。ボウズ、あのワニ男には食われなかったが、マーメイドの姉ちゃんにも食われないように注意しろよ!」
「余計な下世話だ!」
―― ――
「よし、まずは宿だな。えーと、この先の突き当りを右に行って……」
ハイドラ島の水神龍調査の為に数日滞在する予定なので、オレは事前にシグレのギルド会館で宿を一部屋予約していた。
ちなみに窓口は商業ギルドのチャラ男兄ちゃん。
なんでも兄ちゃん行きつけのオススメ宿があるということで、少し割引で予約してくれた。
「ここの通りをまっすぐ行って、左にある……あれ? この先って……」
見覚えのあるアーチ状の看板。
そこにはこれまた見覚えのある『ようこそ人魚新地へ』の文字が。
「なんか、嫌な予感がビシビシするぜ……」
荷物をのっけた小舟を引きながら、水着姿で人魚新地を練り歩くオレを見て何とも言えないジメジメっとした視線を投げかけてくるマーメイドのお姉さん達。
多分目を合わせたら面倒くさいことになるので、オレはチャラ男兄ちゃんに貰った宿の案内図を顔の前に掲げながら速足で通りを進んでいく。
「おや、そこにいる少年はホムラくんじゃないか!」
「いえ人違いです」
「そんなわけあるか」
「ぶわっ!?」
いきなり話しかけられたのでスルーしたら水鉄砲を顔に当てられた。
な、なんなんだ一体。
「あ、ピッチさん……」
濡れた顔を拭いて前を向くと、そこにいたのは人魚新地でお医者さん兼自警団をやっている姉御マーメイド、ピッチさんだった。
「やあホムラくん。今回は一体どんな悪さをしにきたんだい?」
―― ――
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