第81話 みんなの予定
「うーん、やはりもう一回ハイドラ島に行かないと分からんな……」
『水神龍の鍵』という謎のスキルを習得してから色々と調べていたが、なにか特殊な力が発動するということもなく、ただスキルの習得欄に表示されているだけのものになっていた。
シグレにある水神龍の祠に行ってみたけど、特になにも起きず……一体どこの鍵なのかもわからない。
「というわけで、オレは明日からしばらくハイドラ島に滞在する」
「「えー」」
「なにその反応」
宿の食堂で朝食を食べつつクロムとチユにハイドラ島行きの予定を告げると、いかにも『わたし不満です』みたいな反応をされる。
「どうせまたマーメイドのお姉さんとイチャイチャしにいくつもりにゃ」
「またってなんだ。そんな事実は一度もない」
「……ちーも、行きたい。でもお仕事ある」
チユは別件でクエスト依頼か何かを受けているらしい。
オレ達はカマドの街を出て3人で旅をしているけど、クランを組んで毎回協力しながらクエストをこなしているわけではなく、普段はみんな自由に行動しているので、今回みたいに予定が合わない場合も発生するのだ。
「クロムはどうするんだ?」
「クロも一緒に行きたいにゃ! でも、明日からウシロと一緒にビーチバレー大会の練習をするから無理にゃ」
「ビーチバレー大会? なんだそりゃ」
「シグレの街が主催してるスポーツ大会だよっ!」
「うわっ! びっくりした……ウシロか」
「おはようホムラくんっ!」
宿にやってきたのはシグレにある水神龍の祠を管理する祠守のウシロだ。
さっき言ってたビーチバレー大会のユニフォーム代わりだろうか、朝からナイスバディなビキニ姿を披露されて少しドギマギしてしまう。
「このあとちょっと二人を借りてくね」
「ああ、オレは構わないが……」
「水着を買いに行くにゃ。ホムラもどうかにゃ?」
「いや、そこは女の子同士で楽しんできてくれ」
水着選びに付き合わされるのはごめんだからな……『どっちが良いかにゃ?』とかいう正解のない質問をされたらたまったもんじゃない。
「……ちーは、ホムラが履いてたのと同じのがいい」
「オレと同じのって、ハイドラ島で履いてた海パンか? よくないよくない、ちゃんと女の子用の水着を買ってくれ」
たしかにチユは胸がまあ、効率的というか、なだらかだからワンチャン堂々としてれば少年に見え……ないよなさすがに、うん。
「チユはワンピースタイプの水着とか似合うかもな」
「……ワンピース」
「海賊王にゃ!?」
「ちがわい」
―― ――
「えーと、ハイドラ島行きの船は……明日は早朝に1本だけか。田舎のバス停って感じだな」
ギルド会館にある船の運航表を確認して予約を取る。
天候や日によっては船が出ない日もあるので、1本だけでも出てるならラッキーかもしれない。
まあ出てなかったら前にみたいに船の護衛クエストを受ければ良いか……でもそれだと自分のタイミングで動けないな。
「……レベル3000もあるんだし、泳いでいけるんじゃね?」
いやさすがに厳しいか……オレ多分、炎タイプだし。水は相性最悪。
「すいませーん、船の予約お願いしまーす」
「はーい……あれ? ホムラくんだ」
「冒険者ギルドのお姉さん? なんでここに」
船の予約受付窓口に行ったら冒険者ギルドのお姉さんが対応してくれた。
なんでこの人ここにいるんだろう。
「人手が足りてなくてねー。ホムラくん、うちに就職しない?」
「いやしませんけど……」
「私のところに永久就職でも良いよ」
いやしませんけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます