第68話 孫娘
「ウチのお祖父ちゃんがごめんね~。面倒くさい絡まれ方したでしょ」
「いやまあ、途中までは普通だったぞ。ちょっと祠守の後継者にさせられそうになったが」
「孫と結婚してくれとか言ってたにゃ」
デンゲンさんが逃げていった方角を向いて溜め息を吐く女の子。
お祖父ちゃんって言ってるし、もしかしてこの子がデンゲンさんの孫娘なんだろうか。
「あー、また見ず知らずの人をウチのお婿さんにしようとしたのか。まだボケてはないと思うんだけど、脳みそが筋肉で圧迫されてるんだよきっと」
「……脳みそ、むきむき」
「ごめんねみんなっ……えっと、まずは自己紹介! ウチの名前はウシロ。デンゲンお祖父ちゃんの孫で、この祠の管理をしてるんだっ!」
「……ウシさん?」
「ウシじゃないよ、ウシロだよっ!」
「でもおっぱいはウシみたいにゃ」
「おいやめろ」
小声でとんでもないことを耳打ちするクロムを窘める。
……いやまあ、オレもそれはちょっと思ったが。
「オレはホムラだ。よろしく、ウシロ」
「クロはネコネコ族のクロムにゃ!」
「……ちーは、ハーフエルフのチユ」
「みんなよろしくねっ! あ、それと……泡沫の街シグレにようこそっ!」
どうやらウシロにはオレたちの見た目や雰囲気で最近街に来た外部の人だということが分かるらしい。
とりあえずデンゲンさんに話したような事をウシロにも説明する。
「そっかあ、みんなは祠の神龍様について調べて旅してるんだね」
「正確にはオレ個人の目的だけどな」
「クロはホムラの旅のお供にゃ!」
きび団子あげたつもりは無いんだけどな。
「……ちーは、故郷に帰る途中」
「そっか~! チユちゃんは小さいのに偉いねっ!」
「……ちー、えらい?」
「ああ、そうだな。偉い偉い」
「……えへへ」
まあこの子、元勇者クラン所属のAランク冒険者なんですけどね。
「そういえば、ウシロはさっき祠の管理をしてるって言ってたにゃ。祠守はデンゲンおじいちゃんの役目じゃないのかにゃ?」
「それがねえ、お祖父ちゃんはもう祠守を引退してて、今はウチが引き継いでやってるんだけどね。ウチが独り身なのを心配してるのか、女が祠守をやってるのが嫌なのか分からないけど、祠に興味を持った若い観光客とか冒険者に孫娘と結婚してくれーって言って回ってるんだよ。めちゃめちゃ迷惑だよほんと」
「それはまあ、普通に迷惑だな……」
中には実際にウシロと会って本気にしちゃう冒険者も結構いるらしい。
まあ、普通に可愛いしな。あとおっぱいも大きいし。
「むむ、ホムラから邪悪な魔力が溢れている気がするにゃ」
「……ちーにも、見える気がする」
「気のせいだから安心しろ」
ウシロの服装も良くない気がする。
トップスは薄手のシャツを胸の下辺りで結んでお腹を出して、ボトムスは丈の短いホットパンツ。
それでいてスタイルもバツグンということで、思春期男子としては非常に目の毒っていうか、保養っていうか。
「まあ、そもそもこの街にお客さんが来ること自体そんなに無いし、更にその少ないお客さんの中で祠に興味を持ってくれる若い男の人なんてほとんどいないから、実害はたまにしかないんだけどね」
「久々にオレたちみたいな神龍様が好きそうなやつが来てテンション上がっちまったんだな」
「中々に迫真の演技だったにゃ」
「その節は本当にごめんね! ウチでよければ水神龍様の伝承をお話しできるけど、どうかな?」
「おお、それは是非教えてもらいたい」
「ニギハヤミコハクヌシ様にゃ」
だからそれはジブリだって。
「それじゃあ、お祖父ちゃんにかわってウチから説明させてもらうね。シグレの街に伝わる、水神龍『オーケアニス』様の伝説を」
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