第65話 一部屋でいいよね?



「お待たせー鑑定終わったよホムラくーん」



「あっはい」



「ヒトクイサギ1匹丸々で買取り代金がなんと! ドゥルルルルルルルルル」



 いや普通に教えてくれって。



「ジャン! 3万5千エルになりまーす」



「おおー」



「魔物一匹でこの値段は中々にゃ!」



 街道キャラバンにいたときに倒した荒地ハイエナとかだと1匹で数千エルとからしいから、それに比べるとヒトクイサギの買取価格はかなり高いと言えるだろう。



「解体費用が差し引いてあるから、その辺り自分でやってもらってから持ち込めば4万ちょいになるけどどうするー?」



「いや、そのまま買取りでお願いします」



「はいはーい、りょ!」



「……りょ」



 こんなに大きいヒトクイサギを自分で解体するのはさすがに大変だろうし、そもそも魔物の解体とかやったことないしな。

適当に皮と内臓取って丸焼きで食ったりはしたことあるけど、素材として傷つけないようにきれいに解体するにはそれなりのスキルが必要そうだ。



「ってかホムラくんステータスと実績ヤバすぎ! なんでEランクなの?」



「いや、まだ冒険者になったばかりだから……」



「そっかー。今の状態ならDランクの昇格試験も受かると思うし、気が向いたら冒険者ギルドにいってランク昇格の申し込みやってきなよー」



「そっすね……」



「あ、俺もう少しであがるから一緒にジム行かない? プロテイン奢っちゃうよ☆」



「いや結構です」



 シグレの商業ギルドで買取りを済ませたオレたちは、街に滞在する為の宿を探すことに。



「とりあえずオレの部屋と……クロムとチユは同室でいいのか?」



「ホムラも同室でいいにゃ」



「良くないだろ」



 道中で野宿したり街道キャラバンの宿馬車ではひと部屋だけ借りて宿泊したりもあったが、一緒に旅をしているとはいえみんな男女の区別はつくお年頃だ。

ヒトクイサギの売り上げも手に入ったし、街の中なら街道キャラバンの宿馬車よりは安いはずだから、二部屋借りた方が良いだろう。



 ―― ――



「申し訳ございません。ただいまおひとり様用の個室は満室となっておりまして……クイーンベッドルーム、またはロフトダブルベッドルームでしたらご利用いただけるのですが」



 …………。



「クイーンベッドルームが1泊1500エル、ロフトダブルベッドルームが1泊2800エルにゃ」



「じゃあ、ロフトダブルベッドルームで」



「ちなみにクイーンベッドルームは3名まで宿泊可能です」



 なんで安いほうをオススメしてくるんだよ。



「……ちー、クイーンベッドに泊まってみたい」



「3人はさすがに狭いだろ……」



「いいえそんなことはありません。むしろロフトダブルベッドルームのほうが狭いですね。部屋が収縮して朝起きたら高確率で圧死している可能性が高いです。立ったままロープに手をかけて寝た方がマシなくらい狭いです」



「じゃあ1泊2800エルも取ってるのおかしいでしょ」



 昔のイギリスのハンガー宿かな?

ていうか部屋が収縮ってなんだよ……



「ホムラ、臨時収入があったとはいえお金は大事にゃ! ここは店員さんの親切心に感謝してクイーンベッドルームに泊まるにゃ!」



「いやでも、さすがに3人でベッドひとつはなあ」



「ご安心ください。当宿はシグレの街ナンバーワンの防音性能を有しています」



「……すごい」



「それは助かるにゃ!」



「なにに助かってんの?」



 いやまあすごいけどさ、ベッドの大きさうんぬんと関係ないじゃん。



「はい! それじゃあ多数決をとるにゃ! クイーンベッドルームが良い人~!」



「……はい」



「はい」



「満場一致で決定にゃ!」



「おい違うよ3人目の人店員のお姉さんだよ」



 この後もしばらく3人から粘られて、結局クイーンベッドルームに宿泊することになってしまった。

いやなんで店員も安い宿を推してくるんだよ。

ちなみにロフトダブルベッドルームは普通に広かったし収縮もしないらしい。

なんなんだこの店。

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