第64話 泡沫の街シグレ
「さあ到着だ。長旅ご苦労さん」
「お世話になりました」
「世話になったにゃ」
「……船、たのしかった」
ハイドラ湖にある『ハイドラ・スイムバス』の船着き場から船に乗せてもらい、オレたちはついにシグレの街にたどり着いた。
「こっちこそ助かったよ。あんたらならどれだけ湖が荒れてても乗せてやるから、いつでも声かけてな」
そう言って船長さんはシグレの街にある『ハイドラ・スイムバス』の船着き場へと帰っていった。
「さてと、それじゃあまずは商業ギルドに行って討伐したヒトクイサギの買取りをやってもらわねえとな」
オレたちが今いるのはシグレの街にあるギルド会館前だ。
この街には湖に面している建物が多く、桟橋を設置することによって地上からだけではなく船で乗り付けて入ることが出来る。
巨大なヒトクイサギを地上からえっちらおっちら皆で運んでいくとかなりしんどそうなので、船長さんの善意でギルド会館の桟橋で降ろしてもらったのだ。
「なんか、ギルド会館の雰囲気もカマドとは違うな」
「開放感がすごいにゃ」
シグレのギルド会館は木製の広い平屋の建物で、なんというか南国のリゾートホテルのような外観だった。
石造りで結構お堅めな雰囲気のカマドのギルド会館とは違くて、どこかゆったりとした時間が流れていそうな気もする。
まあカマドの街はヴォルケイム火山地帯に近いから噴火対策とかも考えての街づくりなんだろうけど。
「……お魚、いっぱい売ってる」
「なんだろう、地中海の港町兼、南の島のリゾート地って感じだな……」
「ホムラ、地中海行ったことあるにゃ?」
「無いな」
そういや海外旅行とかしたことなかったわオレ。
高3の修学旅行で沖縄行く予定だったんだけどなー……まあ沖縄も海外じゃないけど。
「おお、天井が広いな」
「サーカステントみたいだにゃ」
ギルド会館に入ると、広めにとられた各ギルドのブースと、白い布で覆われた吊るしの天井が視界に入ってくる。
ギルド員もアロハシャツみたいな制服で、デパートの中の物産展的な雰囲気を醸し出している。
「すいません、買取りをお願いしたいんですけど」
「はいはーい、ちょっと待ってねー」
商業ギルドのブースに行くと、金髪褐色筋肉ムキムキの『ザ・海の男』みたいなお兄さんがカウンターで対応してくれた。
「お、冒険者キッズじゃーん。ギルドカード持ってるかーい? お、そっちのお嬢さんたちかわいいねー! どう? これからプロテインしばきにいかなーい?」
「行かないにゃ」
「……しばかない」
商業ギルドのお兄さんはチャラかった。
「あ、あのこれ、オレのギルドカード……」
「はいはーい。ホムラくんね。冒険者ギルド所属、ランクE、魔力レベル3300……」
…………。
「ホムラくん、これってー……」
「あーそれは、なんというか、印字ミスというか」
「めっちゃ鍛えてんじゃんホムラくん! いいねー! 君の魔力大胸筋も喜んでるよ!」
「なんすかそれ」
お兄さんはチャラいけど良い人だった。
「それで、買取り品はなにかなー?」
「あっはい、ヒトクイサギっていう魔物を一匹買い取ってほしくて」
「大きいから外の桟橋にロープで繋いであるにゃ」
「おっけー! ちょっと確認してくるねー」
…………。
「うわすっげー! めっちゃデカいじゃん! あれホムラくんたちで倒したの!? めっちゃ強いじゃん君たちー!!」
お兄さんはめちゃめちゃ驚いてめちゃめちゃ褒めてくれた。
「鑑定するから筋トレでもしてちょい待っててねー。あ、待ってる間プロテイン飲む?」
「いやいらない……」
「そうだよねーやっぱプロテインだよねー」
「話聞いてないにゃ」
「パッション屋良かよ」
お兄さんは脳筋だった。
「……ぱっしょん?」
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