第60話 街の外では助け合い
「食べ物いっぱい貰っちゃったにゃ」
「お、重い……」
魔王軍の襲撃を退けて街道キャラバンに戻ったオレたち冒険者は、キャラバンで働く商人や泊まっていた旅人たちにとても感謝され、お礼として店の商品やサービス券を大量に渡された。
今回のような突発的な魔物襲撃の対応などはクエスト依頼としてではなく、あくまで『キャラバンに滞在しているみんなで協力して対処しよう』みたいな感じなので、達成報酬みたいなものは貰えない。
その代わりに協力してくれた人に対して、守ってもらった人たちが善意で食料やサービスを提供したり、タダで料理を食べさせてくれたりする。
まあオレもシビアに金稼ぎしてるわけじゃないから、こういう助け合いの精神は街の外を旅する上では大切だと思う。
「それにしたって、こんなにいらねえよ……」
「……フルーツ、いっぱい」
「干し肉もいっぱいにゃ」
オレは一番の功労者ということで、キャラバンを出てハイドラ湖への旅を再開する時に大量の食料や飲み物を詰め込んだ木箱を渡されてしまい、それを背負って街道をえっちらおっちら歩いているというわけだ。
「……あ、おっきいメロンみっけ」
「荒地ハイエナの塩漬け肉のブロックも入ってるにゃ」
「重い原因絶対それじゃん」
オレの背後でゴソゴソと木箱を漁っているチユとクロム。
ていうか荒地ハイエナの塩漬け肉ってなんだよ。食えんのあいつ?
「結構歩いたし、いったん休憩しつつ食い物を減らすか」
「……メロン、たべたい」
「肉にゃ!」
「肉にゃってなんだよ」
街道横の木陰に腰を下ろして木箱の中身を確認する。
「このビンはなんだ?」
「んーと、これは……ブドウジュースにゃ」
パンもあったので、荒地ハイエナの塩漬け肉を薄く切って葉野菜と一緒に挟んで簡単にサンドイッチを作る。
「久々の魔物肉だな……」
街で売っている肉は基本的にはウシやブタ、ヤギなどの普通の動物の肉が多い。
魔物はダンジョンに入った冒険者が討伐したものがたまに店頭に並ぶといったところだろうか。
この荒地ハイエナの肉もオレたちが倒した個体のものだろう。
「いただきます……はむ」
……もぐもぐ。
「なるほど……これが荒地ハイエナの塩漬け肉……」
だいぶケモノ臭い生ハムって感じだな。
オレはまあ食えるけど……
「臭いにゃ」
「……しょっぱ臭い」
「まあそうなるか」
クロムとチユには少しクセが強すぎたみたいだ。
チユはともかく、クロムなんかは前世の野良ネコ時代にもっとヤバそうなの食ってそうだけどな……ドブネズミとか。
「……メロン、おいしい」
「甘くて果肉感たっぷりにゃ」
「そりゃあまんまメロン食ってるからな」
果肉感たっぷりはそういうのが入ったドリンクとかに使う感想な気がするが……
「ふむ……塩漬け肉とメロンか」
これはあれじゃないか?
一緒に食べればいわゆる生ハムメロン的な感じになって美味いのでは?
「よし、メロンに塩漬け肉を乗せてっと」
「……ホムラ、なにやってる?」
「うげげ、絶対不味いにゃ~」
「まあまあ見ときなさいって、これが美味いんだから……はぐ」
……もぐもぐ。
「…………」
クソ不味いじゃねえか。
「クロム、チユ……これ絶対真似すんなよ。クソ不味いから」
「知ってるにゃ」
「……そんなの、やるわけない」
やっぱ、メロンはそのまま食うのが一番美味いよな。
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