第59話 神魔将タテガミ



「それで、そのジンマシーンってのはなんなんだ?」



「神魔将だっつってんだろ!!」



 オレは全方向から襲いかかってくる荒地ハイエナを返り討ちにしながら、目の前にいる魔王軍の幹部……神魔将のタテガミとかいう男に色々聞いてみることにした。



「神魔将はエビルアイランドを統べる魔王様直属の部下たちのことじゃ。勇者のクセにそんなことも知らねえのかこのガキは」



「オレの名前はホムラだ。あと勇者でもねえよ」



「ガルルルルルッ!!」



 ボガァッ! ドスッ!



「キャインキャインッ~!」



 両サイドから襲いかかってきた荒地ハイエナの攻撃を避け、軽く腹に蹴りを食らわせると、荒地ハイエナは動かなくなった。



「ゆ、勇者じゃねえのに中々戦えるじゃねえか……」



「お前が連れて来たのは魔王軍のペットか? この前のトラ男の方がもう少し強かった気がするぜ」



「なっ……んだとガキィ……!!」



「ギャオオオオンッ!!」



 バキッッ!!



「ギャッ」



 正面からオレの頭上目がけて飛び込んできた荒地ハイエナの顎下に向かって軽く拳を振り上げると、荒地ハイエナは動かなくなった。



「ハンシンはオレ様の懐刀じゃあ! ハイエナどもを1、2匹倒したくらいでイキってるようなガキに倒されるようなやつじゃねえ!!」



「グルルルルルアアアア!!」



 ゴスゥッ……!!



「…………ア」



 背後からオレの脇を狙って突撃してきた荒地ハイエナの頭に軽く肘鉄を落とすと、荒地ハイエナは動かなくなった。



 …………。



「おっと、そっちの手下は全滅したみたいだな」



「なっ……このガキ、本当にただの冒険者か……?」



 連れて来た荒地ハイエナが全て倒されたことで、さすがにタテガミが動揺する。



「さあ、あとはお前だけだぜライオン男。部下のトラ男をどうやって倒したか教えてやるよ」



「……ふん、まあ今回はヴォルケイム火山地帯の調査とハンシンの捜索に来てただけじゃ。引いてやる……」



 連れている魔物が全滅してしまったせいなのかは分からないが、どうやらタテガミはこの場から引き上げるようだ。



「おいクソガキ……ホムラと言ったな、お前だけは許さねえ……いずれ必ずハンシンを殺した落とし前をつけさせてやる」



「今でも良いぜ」



「うるせぇ!!」



 ピィーーーーーー!!



 タテガミがおもむろに指笛を吹くと、急に彼の足元の地面がボコボコと盛り上がり出す。



「グワアアアアアアアアア!!」



「うわっ!?」



 地面の中からいきなり飛び出してきたのは、目の無い巨大なサメのような魔物だった。

そいつが飛び出してきた瞬間にタテガミをばくっと飲み込み、そのまま地中へと戻っていったのだ。



「な、なんだったんだ……?」



「あ、あれは『エビルシャーク』だ……!」



「あんなのが下にいたなんて、生きた心地がしないぜ……」



 オレとタテガミたちの戦いを離れて見ていた他の冒険者たちが集まってくる。

周りを確認すると、そこら中にオレや他の冒険者たちが倒した荒地ハイエナの死体が転がっている。

どうやらなんとか危機は去ったようだ。



「エビルシャークか……」



 タテガミが指笛を鳴らして自ら呼んだわけだし、食われたわけじゃないんだろう。

魔物の口に入って移動するとかオレならそのまま食われないか気が気じゃないが。



「君、めちゃめちゃ強いな……もしかして勇者ギルド所属?」



「いや、普通の冒険者です」



「そうなんだ……じゃあ高ランク冒険者ってことか」



「いや、今はEランクっすね」



「それはさすがに嘘でしょ」



 周りの冒険者たちはオレの話を信じてくれなかった。

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