第52話 旅のお供
「ったく、付いてくるなんて聞いてないぜ……」
「言ってなかったからにゃ」
「……さぷらいず」
カマドの街を出たオレたちは、次の目的地である『シグレ』という街があるハイドラ湖へと向かって街道を進んでいた。
そう、オレじゃなくて〝オレたち〟なんだよね。
何故かクロムとチユも一緒に行くことになったのだ。
「アムラたちは知ってたのか?」
「四万屋のみんなにはホムラと行くって事前に言ってあるにゃ」
「……ホムラがいたら、ちーも安心」
どうやらチユがまた悪いクランに引っかからないように子守り的な意味もありそうだ。
「というかホムラ! 街を出る前にどうしてクロを誘ってくれにゃかったんだにゃ!?」
「いや、どうしてって」
「クロはずっとホムラを探してたんだにゃ、命を助けてくれたホムラに恩返しするために……だからホムラに付いて行って旅のサポートをするんだにゃ!」
「いや、別にオレはそういうつもりで助けたわけじゃ……」
せっかく異世界に転生したんだ、クロムにも自分の人生を楽しんでほしい。
いや、元が猫だから猫生か? ネコネコ族は獣人族だから獣人生……?
まあそこはどうでもいいか。
「それなのに、恩返しするどころかまた助けてもらっちゃったにゃ。しかも2回もにゃ」
「2回……ああ、ハンシンから助けたときと、アスベルとの決闘か」
「……ちーも、助けてもらった」
勇者ギルドのクラン『女神の聖火』でヒーラーをやっていたハーフエルフのチユ。
騙されてサインした契約書のせいでクランを抜けられなかった彼女のため、オレは『女神の聖火』のリーダー、アスベルと戦って彼女をクランから解放したという経緯があった。
オレがアスベルに負けたらクロムがオレから解放(?)されてアスベルのもとに行くという条件で受けた決闘だったので、ある意味クロムも助けたってことになるのかな……?
「……怪我したら、ちーにおまかせ」
「それはありがたいな。オレは回復魔法とかは習得してないから」
体内の魔力を練って負傷部位に集中させることである程度怪我の治りを早めたりは出来るかもしれないが、ヒーラーとしてのチユはかなりの実力を持っている。
彼女と一緒に行動できるのはかなり快適な旅になるかもしれない。
「クロもホムラのお役に立てるにゃ!」
「クロムは何が得意なんだ?」
そういえば、クロム……というかネコネコ族ってどういうタイプなんだろう。
エルフは魔法が得意らしいから、ハーフエルフのチユがヒーラーをやってるのは分かるんだが。
「クロは夜のお世話が得意にゃ!」
「……夜の、おせわ?」
「お前……」
「あ、間違えたにゃ。夜目が効くから夜の見張りが得意にゃ。視覚とか聴覚も人間族より鋭いし、動きも素早いから偵察とかもできるにゃ」
なるほど、クロムは夜が得意な忍者タイプってとこか。
「……ホムラ、夜のおせわってなに?」
「さあな、夜食とか作ってくれるんじゃないか」
「クロがホムラの夜食になるにゃ」
「お前マジそれやめろって」
クロムはオレの中身が見た目通りの年齢じゃないことを知っているからたまにゲスいことを言ってくるんだよな……
「……クロム、ひじょうしょく?」
「チユ、おなか減ったら食べていいぞ」
「良くないにゃ!」
そんな感じでワイワイしながらしばらく街道を歩いていた時だった。
「はあ、はあ……や、やっと見つけたぞ……!!」
「ん?」
「にゃ?」
「僕をコケにしたままカマドから逃がしたりしないぞ、卑怯者ホムラ……!!」
「……だれ?」
オレたちを追って来たのか、息を切らしながら走り寄って来る老け顔の男。
「おまえは……」
…………。
「誰だっけ?」
「未来の勇者候補のハリボッテ様だよ!!」
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