第47話 アスベル様、よっわ
「アアアアアアアあ〝つ〝い〝いいいいいいいいいいいいいい!?」
「な、なんだ今の技はっ!?」
「まるでドラゴンの攻撃だぜ!?」
オレの発動した業火の魔法、イグニッションフレイムをくらって火だるまになるアスベル。
これなら盾を構えたところで無意味だろう。
「ハリボッテと戦ったときは魔法なんて使ってなかったよな……?」
「ああ、一発殴ってそれで終わりだ」
「こんな隠し玉も持ってやがったのか……」
「はあ、はあ……アアアアアアアアアッ!?」
オレの炎は相手を焼き尽くすまで消えることはない。
これならすぐにアスベルも降参して……と思ったが、どうやら炎の渦の中でダメージを受けつつもチユにかけられた魔法の効果で回復する、というサイクルでなんとか粘っている。
「出たあああ! あれが魔王軍の手下、ハンシンを灰にしたホムラの火魔法にゃ!」
「すごいわホムラくん! かっこいい!」
オレのイグニッションフレイムを目の当たりにしたアムラたちは興奮気味にオレの応援をしてくれている。
一方、アスベル側の関係者エリアは……
「「「…………」」」
「……ホムラ、すごい」
キラキラとした視線を向けてくるチユ以外はどこか唖然とした表情で火だるまになってもがくアスベルを見つめていた。
「はあ、はあ……ぼ、僕はこんなものに屈したりしな」
ボアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
「ア〝ッアアアアアアアアアアアアアアアアア〝ツ〝イ〝ィイイイイイイイイイイコロシテクレエエエエエエエエエエエッ!!!!」
「うーん、結構耐えるな」
おそらくチユのバフ魔法と自動回復魔法の効果だろう。
たしかにこれなら並みの攻撃をくらってもほとんどダメージが通らず、通ったとしてもすぐに回復してしまうかもしれない。
「よし……とどめ、刺してやるか」
オレはもがくアスベルにゆっくりと近づきながら、右腕に魔力を集中させて、凝縮した炎を纏うようなイメージをする。
ボッ……ボオオオオオオオオオオオオ!!
「お、おおっと!? ホムラの右腕がいきなり炎に包まれたぞおおおお!?」
「なっなんだありゃあ!?」
「あんなバフ魔法、見たことないぞ!?」
観客たちの驚愕する声を聞きながら、炎を纏った右腕を構えてアスベルに向かって拳を振り上げる。
「はあ、はあ……!? ま、待ってくれ、これ以上はァッ!? こ、降参するからッ!! こ」
「ふんっ!!」
ボッギィィイイイイイイイイイイイイイ!!!!
「ヴぉぶラァッ!?」
炎を纏ったオレの拳は、イグニッションフレイムでドロドロになっていたアスベルの大盾を貫通し、火だるまになった彼の顔を正面からブチ飛ばした。
「……ちーの魔法、おしまい」
「チユのバフ魔法と回復速度を突破したか……さすが俺の見込んだ男だぜ、ホムラ」
「ア、アスベルちゃん、大丈夫かしらあ?」
…………。
「……はっ!? ア、アスベル戦闘不能! 勝者、ホムラ!!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」
こうして、二人の女の子の自由を賭けた勇者アスベルとの戦いは、オレの勝利で幕を閉じたのであった。
「ワシの5万エルがあああああ!?」
「勇者が冒険者に負けるなんて聞いてねえぞっ!?」
「金返せー!!」
瀕死状態のアスベルに賭けで負けた観客から屋台料理のゴミなどが投げ込まれる。
治安悪いなおい。
「あーあ、こりゃあ『女神の聖火』への支援者も減っちまうだろうなあ……」
「あいつ、冒険者ギルドにハーレムクラン作ってたよな? 金払い悪くなるんじゃねえの?」
「アスベル様、よっわ」
「貰えるお金減るならクラン抜けよっかなあ」
……なんか、自業自得だけどちょっとだけ可哀想だな。
「……ホムラ、ちーを自由にしてくれて、ありがと」
ちゅっ。
「ん、おう……」
「あ~っ! チユがホムラのほっぺにちゅ~した!!」
「ぐぬぬ、これは思わぬ伏兵が……!!」
……腹減ったなあ。
「よし、ツイスターチキンサンドでも食って帰るか」
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