第41話 女神の聖火
「なるほど、それではその魔王軍幹部のタテガミの部下と名乗ったハンシンというトラトラ族の男が単独で行動していたと……」
「クロムの話では、なにか調査をしていたと言ってました」
「ここ最近のヴォルケイム火山地帯の活発化の原因を調べてるのかもしれねえな……」
みんなの紹介が終わったところで、勇者ギルドのクラン『女神の聖火』に昨日戦ったハンシンの詳細を説明する。
『女神の聖火』はカマドの街に常駐している勇者ギルド所属のクランチームで、魔王軍が来た際の街周辺の警備や、ダンジョンでの調査を行なっているらしい。
ちなみにオレの説明をメインで聞いてくれているのは剣士のナクラーマ。
ヒーラーのチユはまだこの国の言葉に慣れていないということで、クロムがゆっくり説明している。
で、クランリーダーのアスベルと魔法使いのブルベリはなんかイチャイチャしてて話半分って感じ。なんだこいつら。
「詳しい話を聞く前に、オレが殺しちまったんでもうこんな状態なんだが……」
オレはガラスの瓶に入れていたハンシンの骨と灰を見せる。
一応証拠として少し採取しておいたのだ。
「こちらは昨日、冒険者ギルドのほうで鑑定しておりまして、トラトラ族のハンシンという男の遺体だと判明しています」
ミクティさんが鑑定結果を印字した紙を持ってくる。
鑑定用の魔道具の種類によっては、今回のように死体の一部があれば、その者の死亡時のステータスが確認できるという事だった。
「魔力レベル、132だと……!?」
「これを、ホムラくんが倒したというのですか!?」
「えっはい……」
「炎のブレスで一撃にゃ」
ハンシンの死亡時ステータスを確認したナクラーマとドマジメさんが驚愕の表情を浮かべる。
なんだ? なにか問題があったか……?
「失礼だが、ホムラくんのギルドカードを見せてもらっても?」
「どうぞ」
「冒険者ギルド所属、ランクFで、魔力レベル……3299!?」
「どういうことだい、これは!?」
「あー、それは多分、文字化けっていうか、印字不良なので……」
ミクティさんがギルドカードを作った時の説明をする。
まあでもあのハンシンが132レべだったってことは、3299は無いにしても300レべくらいはあるってことなんだろうか。
「魔力レベル132のハンシンを倒せるなら、冒険者ランクA相当……いやそれ以上か? 余裕で勇者ギルドに入れるレベルじゃねえか……それがギルドランクFってのはどういうことなんだ……?」
「いやオレ、一昨日ギルドカード作ったばかりなので……」
こちらを不審がるナクラーマに『ギルド会館の無い小さな集落出身で、今まで一人で修行しながら旅をしてこの街で初めて冒険者ギルドへの登録をした』と説明しておく。
うん、まあ大きな括りとしては間違ってないだろう。
「はっはっは!! その実力、勇者ギルドへの昇格条件を満たした暁には是非ともうちに来てもらいたいね!!」
「オレを勇者ギルドに……ってことですか?」
勇者ギルドに所属するには、まず冒険者ギルドに登録し、クエストなどをこなしてギルドランクA以上になる必要がある。
そこから勇者ギルドへの所属希望者に対して実力試験を行ない、合格すればソロの勇者として登録され、自分でメンバーを集めてクランを組んだり、他のクランから勧誘されたり、はたまたソロのまま活動したり……ということらしい。
「なあホムラ……実はうちの『女神の聖火』には下部組織として、冒険者ギルドにもクランがあるんだ。ランクAになるまで、まずはそこに所属して活動してみねえか……?」
「ナクラーマさん、いや、オレは勇者には……」
「そうだ、僕からもぜひ言わせていただきたい!!」
すくっと立ち上がり、いきなり大声で話し出すリーダーのアスベル。
さっきまでブルベリとイチャついていたのに急にどうしたのだろう。
「君の様な人を我がクラン『女神の聖火』は求めていた……一緒に来てくれないか!」
「いやだからオレは」
「クロムさん!!」
…………。
「えっ?」
「にゃ?」
アスベルはチユと話していたクロムの前に行き、跪いて彼女の手を取った。
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