第39話 朝ニャン
……。
…………。
チュンチュン、チュン。
「ん……朝か……」
なんか、身体が重いな……昨日の疲れがうまく取れていないのだろうか。
「すう……すう……Zzz」
…………。
「マジかよ」
布団をめくると、オレを抱き枕のようにして気持ち良さそうに眠るクロムがいた。
「おいクロム、起きろ。てかなんでオレの部屋で寝てんだ」
「ん~……あと3年にゃ……」
「石の上じゃねえんだぞ。もう十分温まってるから」
クロムを引き剥がしてベッドから降りる。
部屋の鍵は……かかってるよな。
「壁に穴とか空いてないよな……どっから入ってきたんだコイツ」
「んん~……窓にゃ……Zzz」
「寝言ヒントきたこれ」
そういえば暑かったから窓を少し開けて寝てたんだった。
それにしたってここ2階なうえに窓の外は直角の壁で、ベランダみたいなものも無いのによく入ってきたな。
「さすがネコネコ族……」
「う~ん……あ、ホムラ……ぐっどもーにゃん」
「おはよう、クロム」
「んん~!」
クロムが四つん這いになり、尻尾をぴんっと立てて伸びをする。
「なんでオレの部屋で寝てるんだ」
「感謝の添い寝にゃん。ネコネコ族なりのお礼だにゃん」
「そ、そうなのか……それならまあ」
「まあ、クロは他のネコネコ族に会ったことないから知らないけどにゃん」
クロムオリジナルじゃねえか。
「とりあえずオレ朝風呂行ってくるから。お前も自分の部屋に戻れよ」
「はーい」
そんな感じでクロムが扉の鍵を開けて部屋から出た瞬間。
「あっホムラくん、今日の朝ごはん、なんだけど……」
「にゃっ」
…………。
「ク、クロムちゃん!? なんでこんな朝早くからホムラくんの部屋にいるの!?」
「アムラこそ、ホムラの部屋の前で張ってたにゃ!?」
「……とりあえず風呂入ってくるわ」
―― ――
「それじゃあ、ホムラくんとクロムちゃんはギルド会館に行くのね?」
宿の食堂で朝ごはんを食べつつ、今日の予定をアムラに伝える。
「昨日襲ってきたハンシンとかいうやつの話を詳しく聞きたいらしくてな」
「魔王軍がこの辺りに来てるなら、今よりも警戒を高めないといけないらしいにゃ」
魔王軍。
オレ達がいるシェンドラ王国と対立している組織の事で、メンバーには一部の獣人族と亜人族、そして『魔人族』というこの世界で唯一の種族である魔王一族で構成される。
魔王軍の本拠地は、シェンドラ王国の極北にある『エビルアイランド』という島国らしい。
まあ、この世界をゲームに例えるといわゆるラスボスってやつだろう。
「今までこの辺りに魔王軍の者が現れることはなかったから、この街に常駐している勇者ギルドのクランも少ないのよね」
「クラン?」
「ギルドチームのことよ。勇者ギルドに所属しているソロ勇者の人たちでクランを組んで、協力して魔王軍討伐や警備にあたってるの」
「冒険者ギルドのクランが活躍して、そのまま勇者ギルドのクランに格上げされることもあるらしいにゃ」
「なるほどなあ」
冒険者として活動するならオレみたいにソロでもやっていける人は多そうだが、勇者として魔王軍と戦うならある程度役割分担して戦えるようにクランを組んだ方が良いのかもな。
「それに、クランの方がスポンサーも付きやすいしね」
「スポンサー?」
「勇者は冒険者みたいにクエスト報酬を稼いで生活しているわけじゃなくて、あくまで魔王軍と戦うのが目的なの。倒した相手の素材買取りとかでお金を得ることはあるけど、有名な勇者ギルドのクランには商人や武具職人のお店なんかがスポンサーとして付いて、クランの活動資金を援助しているのよ」
「活躍したら街の人からもヒーロー扱いされるから、クランのグッズを販売したり募金とかも貰えたりするらしいにゃ」
アムラが『この街の薬屋にも有名な勇者クランコラボのポーションとか売ってるわよ』と言って実物を見せてくれた。
なるほど、前世でいう所のアイドルみたいな扱いなんだな、勇者ってやつは。
「まあオレは勇者になるつもりは無いし、とりあえずギルド会館に行って詳細を報告したらこの件はおしまいだな」
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