第38話 アムラとクロム
「うちは混浴禁止です!!」
「「はい」」
裸の付き合いはダメでした。
いやオレも『無理に決まってんだろ』って言って止めたんだがな、クロムの勢いが凄くてな……で、アムラに見つかってめちゃめちゃ怒られた。
そりゃそうだろ、もうただの猫じゃないんだぞあんた。
「というかクロムちゃん? ホムラくんに助けてもらったとはいえ、ちょっと距離近すぎじゃない?」
「え~? そうかにゃ~?」
オレの右腕に抱き着くクロムを笑顔で引き剥がそうとするアムラ。
いや怖いんだよ、笑顔が。
「……っていうかアムラも昨日、入浴時間が終わってから女風呂に来たら私がいるよってむぐぅっ!」
「わーわーわー!!」
「アムラ? どういうことにゃ?」
今度はオレに覆いかぶさって口を塞ぐアムラを笑顔で引き剥がそうとするクロムの図に。
仲良しなんだね君たち。
「ま、まあでも? 私の方が先にホムラくんに助けてもらったし?」
「先っていつにゃ」
「昨日、ヴォルケイム火山地帯でボイルスライムに襲われてたアムラを助けたんだ」
「なんだ、それならクロの方が先にゃ。クロなんか3年前にゃむぐぅっ!」」
「おいコラ」
アムラの前で前世の話をしようとしたクロムの口を塞ぐ。
「3年前? ホムラくんとクロムちゃんが会ったのって昨日が初めてだよね?」
「そうそう、ほぼ初対面だよ」
「にゃむぐぅ~! むぐむぐ」
「うわっ!」
クロムが塞いでいた手を甘噛みし始めたので慌てて話す。
なにこれ習性? ネコネコ族のネコ部分が出てるってこと?
「とにかく! ホムラはクロの運命の人なのにゃ! 実質付き合ってるのにゃ!」
「助けられただけで運命の人なら私だってそうだもん! 実質付き合ってるもん!」
「いや付き合ってねえよ」
「ホムラくんと私は……交際してま~す!」
「交際してないにゃ!」
「築地市場か」
二人ともテンションが上がってよく分かんないことになってやがるな。
「とりあえずオレ、風呂入ってくるわ……」
「クロも行くにゃ!」
「あっズルい! 私も行く!」
「さっき混浴禁止だって言っただろ!」
―― ――
「ふぃ~……生き返る~……」
温泉に入ると一日の疲れが吹き飛ぶな……
ダンジョン生活してたときはたまにマグマ風呂に入ったりもしてたけど、あれは耐性スキルで我慢してただけで普通に熱いだけだったしな。
「それにしても、クロムがあの子猫だったなんてなあ」
猫は約一年で性成熟して子供が作れるようになるっていうし、一応、3才まで生きたってことは大人にはなれたんだろうか。
「にしたって3才は生涯短すぎだよな~……まあ、15で死んだオレもクロムのことは言えないんだけどな」
人間の15才なんてまだまだ子供だ。
親には悪いことをしてしまったな……まあ、それでもあの場で行動を起こしたことをオレは後悔していない。
そして、この世界ではあのときみたいに無意味に相手の命を奪うような輩に負けないよう、己を鍛えておこう。
「明日はギルド会館に行って、今日襲ってきた魔王軍の件の詳細を説明して……あとは何をしようかな」
オレは今13才。前世だったら中学校に通っている年齢だが、この世界には義務教育というものが存在しない。
毎日が夏休みとも言えるし、逆に毎日が平日とも言えるかもしれない。
宿題は無いけど、この世界で親がいないオレは自分で食い扶持を稼がないといけないからな。
「まあ、明日のことは明日考えよう……」
オレは温泉に浸かって今日一日の疲れをゆっくり癒し、ふかふかのベッドでグッスリと眠りについたのであった。
……。
…………。
「ぐぅ~……Zzz」
「おじゃまするにゃ~……」
「ぐぅ~……も、もう食べられない……Zzz」
「ふふっ、ホムラのお布団、あったかいにゃ……」
「ぐぅ~……Zzz」
「ふみゃ…………くー……Zzz」
…………。
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