第12話 試験結果
「はあ、はあ……」
「モヤシ、ツク……シテ……」
インフェルノゴーレムとの戦闘が始まってどれくらい経っただろうか。
オレは逃げ回りながらゴーレムの肩やひざなどの関節部分を狙って少しずつダメージを与えていき、遂に肩から先の両腕を外し、ひざを突かせることに成功した。
装甲が弱い結合部位ではあるが、それでもかなりの耐久力を誇るインフェルノゴーレム。
さすがにオレの拳もボロボロだ。
「魔核は……あれか」
腕が外れた右肩の結合部を見上げると、ゴーレムの中は炎が燃え盛る暖炉のような感じになっていた。
そしてその中央に白く光る大きな結晶のようなものがある。
「ふう……それじゃあ渾身の一発、食らわせてやりますか……っ!」
オレは全速力でゴーレムの装甲を駆け上がり、右肩の結合部からゴーレムの内部に飛び込んで、業火の中で輝く大きな結晶……インフェルノゴーレムの魔核を思い切りぶん殴った。
「ココカラ、サキハ……トオサ、ナイ……」
「だからオレはそっから来たって……言ってん、だろっ!!」
バッキイイイイイイイイイイイン!!
「コ、コ、コ、カ……サ、サ、キ……ト……」
魔核を破壊されたインフェルノゴーレムは機能を停止。
体内の炎も消えて、装甲がガラガラと崩れ落ちていく。
「うおっあぶねえ!」
ゴーレムのガレキの下敷きになる所だったぜ……
「よし、これで……インフェルノゴーレム討伐完了だ!!」
こうしてオレは師匠から課された最後の試練、『炎神龍の岩窟』地下255階層のガーディアン、インフェルノゴーレムの討伐に成功した。
―― ――
「それで装甲がめっちゃ頑丈でさ、肩の隙間を狙って攻撃して少しずつダメージ与えてさ」
「ほう、地道だが堅実な作戦ではないか」
「あ、一応証拠に砕いた魔核持ってきたんだけどいる?」
「それはいらん」
インフェルノゴーレムを倒してクルースニクの元に戻って来たオレは、彼女が作ってくれた料理を食べながら、初めての魔物討伐の感想や、戦っていたときの状況などをひたすら彼女に語った。
クルースニクは興奮気味に語るオレの話を優しく微笑みながら聞いてくれた。
「じゃあ、こっちの宝石みたいなのは……」
「インフェルノゴーレムの魔結晶だな。それはホムラが持っておけ」
実は、インフェルノゴーレムの魔核を砕いて倒した後に、魔核の中から白い結晶が出てきたのだ。
これは前にクルースニクが食器に加工したりしていた魔結晶で、こうやって一部の魔物からも採れるということらしい。
「でも正直かなりキツかったぜ。もうひとつ上の254階層の魔物だってかなり強いはずだし、連続で戦ってたら厳しいかもな……」
「ちなみに一度階層を出て入り直したら中の魔物は復活するからな」
「ええっ!? じゃあまたあのゴーレム倒さないといけないのか」
「そういうことだな」
それなら、もっと鍛えてあのインフェルノゴーレムを楽に倒せるくらいにならないと。
「ダンジョン脱出にはもう少しかかるな……」
「インフェルノゴーレムを倒した今のホムラなら、自分の足りない所を正確に把握して、しっかりと己自身を鍛えることができるだろう」
クルースニクはそう言うとこちらに向き直り、なにかを決心したような、真剣な表情を浮かべた。
「我が弟子、ホムラよ。最終試験を見事クリアしてみせたお前にひとつ伝えておかなければならないことがある」
「な、なんだよ師匠、改まって……」
「ホムラが更に強くなれば、地上へ出る為にいずれここを旅立つときが来るだろう。そしてそれはもうじきだ。そのとき、我は隣にいてお前の助けになることは出来ない」
「あ、ああ……」
クルースニクはこのダンジョンの最深部から出られない。
それは前から聞いていたことだ。
本当は、このまま一緒に外の世界へ出れたら良いのにな、と思っているけど。
「まあ、その予行練習だと思って欲しいのだが……我は明日からしばらく眠りにつく。その間、貴様一人で修行を続けるのだ」
「ああ、わかっ……え?」
クルースニクが、眠りにつく……?
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