第10話 最終試験ホムラ
「すぅ~……」
「そうだ、口元に集中して……魔力を練るイメージを忘れるな」
「…………っ!!」
ボォオオオオオオアアアアアア!!!!
「よし、成功だ!! よくやったぞホムラ!!」
「はあ、はあ……で、出来たっ……!!」
ダンジョンでの修行生活が始まり、更に月日が流れた。
ある程度の実力が身に付いてきたところで、炎に変換した魔力を身に纏う練習を追加で行ない、それが出来るようになってきたところで、ようやく口から火炎を噴き出すドラゴンファイアーブレスの特訓を始めた。
そして遂に本日、俺は今までの特訓の成果を出し切り、口から火炎を噴き放つことに成功した。
「威力はまだまだ向上の余地があるが、人間の身でありながら火炎を放つことが出来るようになったのは、今までの修行を真面目にやってきた証だ! すごいぞホムラよ! さすが我が弟子、我が息子だ!」
「ちょ、ちょっと師匠! 苦しいって」
人型に変化したクルースニクに正面から抱きしめられる。
料理を作ったり、オレに魔力の使い方を教えるのにはドラゴンの姿よりもこっちの方がやりやすいらしく、最近は人間の姿のクルースニクのほうが見慣れているくらいだった。
そんでもって、抱きしめられると分かるけど相変わらず色々とデカい。
「オレもこの特訓の間に結構成長してるはずなんだけどな……」
「母はデカしだな」
「それを言うなら強しじゃない?」
「デカい方がホムラも嬉しいだろう?」
「そ、それは人によるっつーか……」
まあ、乳がいっぱい出るしね。飲み物がそれしかないんだよここ。
というか食べ物が無いからオレの食事は全部クルースニクが生成したミルクとかタマゴとか、尻尾の肉とか……文字通り、クルースニクのおかげで今まで生きてこれている。
「師匠、いつもありがとうな」
「な、なんだ急に。感謝なんぞされても乳しか出せんぞ」
「出さなくていいよ出さなくて……おいやめむぎゅうっ!」
「成長したのうホムラ! 我は嬉しいぞ!」
―― ――
「さて、ホムラよ。今まで長きにわたる苦しい修行、誠にご苦労だった」
「な、なんだよ改まって」
オレがファイアーブレスを撃てるようになった日の食事時に、クルースニクから労いの言葉を貰う。
改めて褒められると、なんだが少し気恥ずかしい。
「初めて我の前に現れたときのホムラは、この世界に転生してきたばかりのひ弱な幼子であった。しかし、今の貴様は身体を鍛え、魔力を自在に纏い、火炎の息吹まで出来るようになった」
「ま、まあ。自分でもがんばったと思うし、かなり力が付いてきたんじゃないかと思うよ」
照れ臭そうに返事をするオレを優しい眼差しで見つめるクルースニク。
なんというか、ダンジョンボス級の魔物だということを忘れるくらいに穏やかな表情をしている。
「……うん、そうだな、もう問題はないだろう。……ホムラよ、貴様は強くなった。今ならこのダンジョンを自力で抜け出せるくらいの力を身に着けているはずだ」
「……えっ? ほ、本当か?」
オレ、このダンジョンを攻略できるくらい強くなった、のか……?
「我も驚くくらいの成長速度だったぞ。おそらく、我の魔力を糧に生きてきたからというのもあると思うが」
確かに、今まで炎神龍であるクルースニクの魔力から生成されたものを食べて成長してきたオレは、普通の食事をするよりもすごい栄養を摂取してたというか、身体づくりに良いものを取っていたのかもしれない。
「それじゃあ、オレは……」
「ああ、我との修行はもう終わりだ。明日、最終試験を執り行おう」
「さ、最終試験……?」
なんだろう、マグマの川で1時間泳ぎ続けろとか?
クルースニクと戦うのは……さすがに勝てる気がしないというか、正直戦いたくない……
「ああ。最終試験の内容は……最深部、つまり今いるこの地下256階層『炎神龍の間』のひとつ上の255階層へ行き、最深部への護り手を務める『インフェルノゴーレム』を倒して戻ってくるのだ」
「インフェルノ、ゴーレム……」
こうしてオレが、師匠であり母でもある炎神龍クルースニクから独り立ちするための、最後の試験が始まった。
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