第9話 ドラゴンファイアーブレス



「さあホムラよ、思う存分打ち込んでくるがよい!」



「はっ!! せいっ!!」



「まだまだ! もっと魔力を拳に集中させよ!」



 クルースニクとの修行の日々が続き、かなり魔力を上手く扱えるようになってきた。

身体をしっかり鍛えているのに加えて、魔力のオーラのようなものを身に纏うことでさらに身体能力が向上し、速く走ったり、高く飛んだりということも出来るようになった。



 最近は魔力を応用した戦い方を練習中で、凝縮した魔力を身体の一部分に集中させることで、高威力のパンチを放ったり、相手からの一点攻撃を防いだりといった戦い方を教わっている。



「うむ、中々に良い感じだ。今のホムラであれば、100階層にいるエリアボス辺りまでなら倒せると思うぞ」



「そうか……まあ、この上にいる一番強い魔物が倒せないと意味ないんだがな……っと!」



「255階層にいるのはかなり耐久力のある魔物だからな。そやつを倒すにはまだまだ修行が必要だな」



 オレやクルースニクがいるダンジョン最深部のひとつ上の階層には、いわゆる『ラスボス前のガーディアン』的な魔物がいるらしく、とにかく守りが堅いらしい。

ソイツが倒せるくらい強くならないと、このダンジョンから抜け出すのは難しい……まあ逆に言えばそのガーディアンを倒せてしまえば、後は徐々に魔物が弱くなっていくので楽といえば楽かもしれない。



「ふむ、魔力の扱い方も中々のものになってきたし、良い頃合いかもしれんな」



「ん、なんだ? なにか別の特訓をするのか?」



「ふっふっふ……ホムラが前々から言っていた、魔法とやらをひとつ伝授してやろう」



「……それって、あの炎吹くやつ?」



「そうだ。あの炎吹くやつだ」



 炎神龍クルースニクの必殺技、ドラゴンファイアーブレス。

名前はオレがさっき適当に付けた。



「あれってさ、炎神龍の師匠だから出来る技なんじゃないのか? オレみたいなただの人間に出来るのか?」



 火を吹くドラゴンだと、大抵『火炎袋』みたいな火薬庫的な器官を体内に持っていて、そこに着火して思い切りブレスを吹きだす、みたいな設定の漫画やゲームが多かったりするけど……



「例えばこのダンジョンに生息しているような、火炎系に適性のある魔物であれば火を吹くやつは結構いるぞ。まあ、我のような強力なブレスを撃てるのはそうそういないと思うが」



「でもオレ、魔物とは違うじゃん?」



「基本的には魔力を身に纏うのと同じ仕組みだ。口内に魔力を凝縮し、それを灼熱の炎として吐き出す。イメージすることが大切だ。そしてホムラよ、貴様にはおそらく、炎に対する適性がある」



「適性? 耐性じゃなくて?」



「そうだ。体質的に炎を扱うことのできる適性だ」



 オレは女神ポルテトから授かった灼熱耐性のスキルを持っている。

しかし、それとは別で火の魔法などの適性があるということだろうか。



「まあ、名は体を表すとも言うしな……とにかく、オレも師匠のように火炎のブレスを撃てるようになるんだな?」



「そういうことだ。今までの魔力の扱い方と少し違うので、慣れるまでは上手くいかないかもしれんが……まあ、コツを掴めば習得は容易いだろう」



 魔法は使えないけど、火は吹けますってか。

最近は装備無しでもマグマの川を泳げるようになってきたし、なんだかどんどん魔物に近づいてるというか、人間離れしてきている気がするな。



「よし、分かった。師匠、オレにドラゴンファイアーブレスを教えてくれ」



「なんだその技名前は……まあ良い。ホムラが望むのであれば、我の秘義を伝授してやろう」



 こうしてオレは、口から炎のブレスを撃つという、サーカス団もびっくりな種も仕掛けもない秘伝の奥義を教えてもらうことになったのであった。



「そうだな、それじゃあまずは……」



「まずは?」



「魔力を炎に変換して全身に纏う練習から始めようではないか」



「それの方がすごくない?」

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