第8話 クルースニクの料理



「師匠の料理ねえ……」



「ふっふっふ、我に任せろ。焼くも茹でるもお手の物だからな」



 どこか自信満々な表情で自分の胸をポンと叩いてふんぞり返るクルースニク。

それはそれとしておっぱいは仕舞ってくれ。目に毒すぎるから。

っていうか、他に食材も手に入らないこの状況で、一体どんな料理を出すというのだろう。



「なあ師匠、料理って……」



「ホムラよ、タマゴ料理は好きか?」



「えっうん、好きだけど……」



「そうかそうか、なら問題はないだろう」



 タマゴ料理かあ、なるほどなあ。



「……ん? タマゴ?」



「少し待て、今体内の魔力を変換してタマゴを」



「うおおおおおおおいっちょっと待てええいい!?」



 オレは慌ててクルースニクの視界から脱出し、変な想像をしないように料理が出来るまでひたすら走り込みをした。



 ……。



 …………。



「ほれ、出来たぞホムラ。我の産みたて新鮮なタマゴを使ったベーコンエッグだ」



「う、産みたて新鮮………」



 しばらくして、クルースニクの『メシが出来たぞ~』の声に誘われて戻ってみると、そこにはガラスで出来たまな板っぽい石台に乗せられたスクランブルエッグと薄切りの肉料理が。

更にミルクがなみなみと注がれたグラスまで用意されていた。



「この食器、どうしたんだ……?」



「いやな、そういえば近くに大きな『魔結晶』が発生しておったなと思い出して採ってきたのだ。グラスは中を熱してくり抜いた」



「へえ……たしかに、普通のコップよりも厚みがあるな」



 魔結晶というのは、大気中の魔力が凝縮されて結晶化したものらしい。

通常は小さな魔結晶が混ざった『魔石』と呼ばれるものが多く、こんな食器に加工できるほどの大きな魔結晶はかなり珍しいのだとか。



「ホムラが我の乳を直接吸うのが嫌だと駄々をこねるのでな、こうして容器を作ってあげたのだぞ」



「いやそれは……ご配慮いただき感謝の極みだが……」



 まあ、こうしてコップに入っている分には普通の牛乳と変わらないしな。

で、それは良いとして……



「し、師匠。聞き間違えかもしれないから一応聞くんだが……このタマゴと、肉はどこから?」



「タマゴは我がさっき産んだものだ。乳を生成して出すのと同じ感じだな。この肉は我の尻尾だ」



「尻尾の肉!? 大丈夫なのか!?」



 慌てて彼女の尻尾を確認してみるも、特に途中で切れていたりする感じではなかった。



「我は大気中の魔力を取り込んでエネルギーに出来るからな。それに尻尾もすぐに再生する」



「そ、そうか……」



 乳やタマゴはまだしも、クルースニクの肉を食うというのはかなり抵抗があった。

まあ、再生するなら多少は心が痛まないか……冷静に考えたら乳やタマゴも十分ヤバいんだけどな。



「さあホムラ、腹が減っただろ。我の料理、思う存分食ってくれ」



「あ、ああ。いただきます……はぐ」



 オレは文字通り『クルースニクの料理』を一口食べてみる。



「…………」



「どうだ?」



「……めっちゃ美味いわ」



 今までミルクしか飲んでなかったからってのもあって、焼いた肉とタマゴは食べ応えがあってめちゃめちゃ美味しかった。



「この肉、結構塩気があるけど……」



「塩の岩を採ってきてな、少し削り入れたのだ。さあホムラよドンドン食え、おかわりもいいぞ!」



「おう!」



 オレは夢中になってクルースニクの料理を食べ進めた。

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