第7話 魔力の扱い方



 炎神龍クルースニクの弟子になった日から、オレはダンジョン脱出を目指してひたすらに己を鍛え続けた。

クルースニクと摸擬戦を行ない、ダンジョンに棲む魔物の特徴や弱点などを学び、走り込みや筋トレで肉体強化にも専念した。

今は人間の姿に変化したクルースニクに魔力の使い方を教わっている。



「よいかホムラよ。魔力というのは目には見えぬが感じることは出来るオーラのようなもの。魔力レベルが高いだけでは意味が無い。きちんと使い方を身に着けるのだ」



「はい!」



 この世界には『魔力レベル』というものがあり、基本的にはこのレベルの高さが本人の能力の強さに関わってくる。

レベルが高いほど多くの魔力を扱うことが出来るが、上手く扱うには訓練が必要だ。



「まずは魔力を身に纏い、自身の耐久を上げる練習をするのだ。生き残るためにはこの技術が必須であろう」



 凝縮した魔力を身体の表面に集めて防御力を上げたり、攻撃の威力を上げたりするのがまずは基本。

習得した魔法を使うエネルギーとしてもこの魔力が必要になってくるので、まずはとにかく魔力レベルを上げていくことと、魔力の上手な扱い方を身体に叩き込むことが大切だ。



「とはいっても、ギルドカードがないと魔法は覚えられないんだけどな……」



「なんだホムラよ、貴様は魔法が使えるようになりたいのか」



「まあ、そりゃあね。ファイアーボールとか撃てたらカッコいいじゃん」



 この火山ダンジョンで火の玉出せても効果ないかもしんないけど。

ハイドロポンプ……いや、冷凍ビームとか?



「ふ……ホムラの身体がもう少し鍛えられ、魔力の扱いにも慣れてきたら我がひとつ魔法を伝授してやろう」



「えっ師匠魔法使えんの!? どんなやつ!? ちょっと見せてよ!!」



「はっはっは! 良いぞ良いぞ……ほれっ!!!!」



 ボォオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアア!!!!



「うわああああああああああ!?」



 すううう……っと息を吸ったクルースニクの口から突然炎のブレスが放たれる。

いやそれ最初にオレと戦ったときのドラゴンブレスじゃねえか。



「それ人間の姿のときでもできるのかよ……!」



 なんかサーカスの曲芸を見せられたような気分になった。

威力はサーカスの100倍以上あったけど。



 ―― ――



「よし、今日の訓練はここまでにしようではないか」



「ふぃ~……疲れた……」



 炎神龍の岩窟で修行を始めてからしばらく経った。

転生してきた初日よりもこの環境に慣れたのか、鍛えて耐性が上がったのか分からないが、この暑さもそこまで耐えられないというほどではなくなってきた。

最初の頃とか、少し激しい運動したらすぐに熱中症一歩手前みたいな感じになって、休憩して水分補給、回復したらまた特訓、を繰り返してたからなあ。

あ、ちなみに水分補給っていうのは……



「ほれ、ホムラよ。食事の時間だ。しっかり栄養を摂って明日も頑張るのだぞ」



「あ、ああ……」



 女性の姿に変化しているクルースニクが片乳を出してオレに差し出す。

今のところの水分補給兼食事、全部これです。

クルースニクのおっぱい。



 体内の魔力を変換して母乳的なやつにしているらしいんだけど、さすがにさあ……色々と厳しいって。

人間の姿に変化するときは身体の大事な所を鱗のようなもので一応隠すようにはなってくれたので、普段は大丈夫なんだけど……



「な、なあクルースニク。あまりわがまま言える立場じゃないんだけど、他にこう、飲み水だったり、食べ物だったりはないのか……?」



 せめて直接授乳させるのは止めてほしい。

ここにある岩石とマグマ使ってガラスのコップとか作れないかな。



「ふむ……フロアには我の他に魔物がいないからなあ。我はこの階層から出るわけにはいかないし、今のホムラが上層に行ったら逆に捕食されてしまうだろうし」



「まあ、それはそうなんだよなあ……」



 でもさすがにこの年になっておっぱい吸い続けるのはなあ……良くも悪くも慣れてきたとはいえ、精神的にあまりよろしくない。



「とはいえ愛弟子の頼みは聞き入れてあげたいもの……ようし、それならひとつ準備してみようではないか」



「ほ、本当か?」



「我に任せよ。最高に美味い料理を提供してやるからな」

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