第2話 目覚めたらダンジョンの最深部だった



 ……。



 …………。



「ん……ここは……?」



 目が覚めると、周りには真っ赤なマグマが流れる地獄のような灼熱の川。

上を見上げても青空は見えず、マグマを反射して鈍く光る岩壁の天井が。

そして目の前には謎の呪文が刻まれた巨大な扉。



「マジかよ……」



 どうやら今までの出来事はタチの悪い夢ではなかったらしい。

前世で殺されたオレは、謎の異空間で女神ポルテトに出会い、そして女神のミスでこんなダンジョンに転生してしまった……



「なんだか手が小さいし、身長も低い気がする」



 そういえば、年齢設定をミスってマイナス5才にしたとか言ってたな……ということは、オレは今10才のガキってことか……



「服はこの世界のものか? なんだかゴワゴワしてるな」



 殺された時は学ランを着ていたはずだが、今は明らかに違う服を着ている。

丈の短い半そでと短パン。その上に全身を覆うマントのようなものを羽織っている。

靴は履いていなくて、包帯のようなものが太ももから足の指先まで巻かれている。



「それにしても、あっついな……」



 ボッチャン、ボッチャンとマグマが弾ける音がする。

普通なら『あついな~』で済まなそうな光景なんだけど、体感的には真夏の昼過ぎくらい。

ポルテトが言ってた『耐性スキル』のおかげかもしれない。



「ていうか、荷物とか何も持ってないんだけど。せめて非常食とか水をさあ……」



 こんなヤバい所に手ぶらで飛ばされてしまった。

これじゃあ、いくら熱さに耐性があったところで餓死してしまう。



「……ん? ポケットになにか入ってるな」



 短パンのポケットをゴソゴソしていると、お尻側の左ポケットに折りたたまれた手紙のようなものが入っていた。



「えーと、なになに……?」



 ホムラくんへ。



 お疲れ様です。女神ポルテトです。

転生場所の設定をミスッてしまい誠にごめんなさい。

ホムラくんが転生したのは、シェンドラ王国にある灼熱の街カマド……の、領地内にある初級ダンジョン、ヴォルケイム火山地帯……の、更に地下にある隠しダンジョン『炎神龍の岩窟』です。しかも最深部です。



 それと、現在のホムラくんのステータスを記載しておきます。



 【ホムラ】

・10才/男

・所持金:0エル

・魔力レベル:15

・スキル:灼熱耐性+

・魔法:なし



 ホムラくんはコツコツレベル上げで成長していくのが好きだと言っていましたが、さすがにレベル1スタートだと速攻で死んじゃうと思うので、少しだけ上げさせてもらいました。



 あ、この世界の人は魔力レベル1~999で、個人によってレベル上限は変わるんですが、ホムラくんだけは上限を解放してあるのでガンガン鍛えてガンガン上げちゃってください。

それからスキルと魔法は、なんか色々やると習得ポイントが貯まって、そのポイントを使って強化したり新しく覚えたりできるので、まあ色々と試してみてください。



「最新ステータスの確認や魔法などの習得には、基本的には『ギルドカード』が必要なので、まずはそこから一番近い街のギルド会館を目指してください……」



 …………。



「って、行けるかい」



 なんというか、ここは結構ゲームチックな世界だということは分かった。

魔力のレベル上げや、ポイントを貯めて魔法を覚えたりするのは楽しそうだ。



「とはいえ、街に行くにはまずこのダンジョンを脱出しないといけないんだよな」



 たしか、一番近い街は『灼熱の街カマド』だったか。

どうにかしてこのダンジョンから脱出して街に向かわないと。



「……この目の前の扉は、多分開けちゃいけないやつだよな」



 ポルテトの手紙によると、現在地はヴォルケイム火山地帯にある隠しダンジョン、『炎神龍の岩窟』の最深部。

つまりこの扉の先にはダンジョンボスがいる可能性が高い。



「よし、それなら来た道を戻るというか、ここから上層へ逆走していけばいずれ洞窟から抜け出せるというわけだ」



 まずは上の階へ行ける何かしらの出入り口を見つけよう。

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