第18話 プロレスを裏で操っていたのは…

 あそこが仲良しさん、だったらレイモードプロレスは卒業できる。

 そんな希望はある。だけど、少し怪しい。

 でも、勘ぐっている暇はない。


「どれだけ時間が掛かったと思ってる」


 このパーティは、エミリ登場イベントをカットしている。

 結果オーライだったエミリの出会いだが、ネクタで同じことが出来るとは限らない。


 っていうか、街の中に魔物が現れる。早すぎるのはいいけど、遅いのは絶対にダメだ。


 次のヒロイン・マリアが現れるのはネクタの街。

 そして、彼女は街一番のお金持ちのお嬢様。

 ただ、その前にアイツがやってくる。

 遂に話が動き出すから、キリの良いポイント。

 パーティを抜けるにはうってつけ。


「そんな怒らなくてもいいじゃない。色々あったのよ」

「…それなら直ぐに出発する。イベントが待ってくれないんなら、魔族だって待ってくれない。最悪、そのイベントを逃すと深刻な問題が発生する。だから今日の夕刻までに絶対にネクタに辿り着くぞ」

「イベント?一体、何の話?」

「ネクタは重要ポイントなんだ」


 ただ流石に、自分がいなくなった後の事も考えなければならない。

 次のヒロインがいなければステーションワゴンが手に入らない。

 このゲームの売りの一つが、多くのヒロインと勇者が、きゃっきゃうふふしながらドライブをすることだ。

 前作は四人でフィールドを歩く普通の冒険だったが、リメイクでステーションワゴンという意味の分からない設定がぶち込まれた。

 馬車システムと同列の扱いである、そのステーションワゴンシステムがなければ、今後のシナリオが全てカットされる可能性がある。

 それで魔族による侵略イベントも止まれば良いが、その確証はどこにもない。


「俺は次の街で降りる。だから、自分本位な考えだとは分かっている。エミリ、お前の戦い方はそのままで良い。街まではアルフレドと前衛に行ってほしい。本来ならそれが一番効率的な編成なんだ。だからフィーネは俺と一緒に後衛…、は不味いから、真ん中。俺が後ろから話しかける」


 アルフレドの視線が気になった。

 ついでにフィーネの視線も気になる。


 モチベになるのはいいことだけど、ここはやりにくいな


「どうしてよ。私も後衛でいいでしょ」

「な…。そうじゃない。俺抜きで戦ってほしいんだ。後ろから魔法について教えるから」

「でも」

「フィーネ。レイの言う通りだ。それにお前、おかしいぞ。レイは」

「じゃかあしぃいい‼俺様の言うことを聞け‼俺は最後にフィーネを眺めてたいんだよぉ」

「先生怖ぁい。気持ち悪ぅい。アルフレド、フィーネ、先生の言う通りにしよ」


 へ…、クソ。また、死角に入られた…だと?

 エミリ…、何を考えてる…


 エミリに遊ばれている感はあるが、今ので2、1、1の編成になった。


 エミリが何を考えているか分からないけど、今は時間がない。


 だからレイは気持ちを切り替えてレクチャーを始める。


     ◇


 フィーネはパッケージ中心にいるヒロイン。

 最終的には賢者へとプロモーションする。

 新島がプレイする時、エミリの採用率は50%程度だが、フィーネの使用率は90%以上だ。

 だからフィーネへのアドバイスはレイ自身の安全の為、だけではない。

 この世界の平和には彼女の存在が不可欠なのだ。

 だから、フィーネには教え込まなければならない。


 でも、アルフレドとの約束がある以上、二人きりはまずい。


 だから、フィーネの後ろ姿に話しかけることになる。


「フィーネ、最後はお前だ」


 後ろから語り掛けたから、彼女の肩がビクッと跳ね上がった。


「…はい」


 冒険に出た後のレイの行動は、はっきり言って神懸かっていた。

 彼女の目には、彼が間違った発言を一つもしていないように思える。

 勿論、それはレイモードを除いた話だ。

 けれど、フィーネはただの演技だったことも知っている。


 だから、正直言って話をしたいと思っていた。

 だから、この状況も気に入らない。

 だから、少しずつ歩みが遅くなる。

 すると、待ちに待ったレイのアドバイスがよく聞こえる。


「フィーネは世界を救う賢者だ。だから、魔法中心に教える。まずは——」


 レイモードではなく、まともな喋り方だった。

 魔法を使って、見て、それで気付いたことをレイは語った。

 そして、フィーネの魔法とモンスターの被害状況を鑑みた実践的な話をする。


「フィーネの実力は俺の5倍、いや10倍と言っていい」

「そんなことない。レイが一番魔物を倒してるじゃない」

「俺はコツを掴んだだけ。コツさえ分かれば、俺なんて瞬殺だよ」


 これまでレイが生き抜くために、半分命がけで掴んだ戦いのコツ。

 フィーネはまだ冒険に出て三日目である。勿論、それはレイも同じ。

 ただ、設定と世界観を、それも最後まで知った状態での実験は、数値に現れない経験の差を生んでいた。


「……そうだったのね。だからあそこで魔法を……。でも、モンスターはレイの言う、決まった動きで動いていて……。——えぇ!私、そんなすごい魔法を覚えるの?——そんな敵とも戦える。レイはホント、なんでも知っているのね。」


 コマンドバトルの仕組みやダメージ計算というゲーム要素から、オープンワールド化、現実に落とし込まれたが故の新要素までを説明する。

 更には、これから覚えるだろう魔法についても説明が行われる。 

 この世界にはそんなことが出来る魔法があるのか、そんなモンスターがいるのか、そして自分はどんな賢者になるのか、色々と言われた。


 でも、もしもこれらが本当のことなら、彼は何者なのか。

 しかも、彼の話はとても聞きやすい。

 それに、


 ——彼は私のことを理解してくれている。


 そしてフィーネは、更に深くレイに心酔していく。


     ◇ 


 真ん中にいる筈のフィーネの歩みが遅い。

 エミリ目線では当然の展開。


 真面目な話をしているのは分かる。

 それは隣を歩く男を見れば一目瞭然である、というかこの勇者のマップに書かれている内容がその証拠なのだ。

 レイはアルフレドにマップの移動方法や敵との遭遇の仕方、さらには追加ヒロイン情報まで、全体をバランスよく教えていた。


 だからレイ君がフィーネ専用のレクチャーをしていることは分かる。


「アルフレド、あれ。不味いやつですよ」

「不味いって、そんな筈ない。だってレイは」

「うん。先生はそんなことしない。でも」

「そんなことより、エミリ。フィーネと何を話していたんだ」


 そこは女同士の約束、なんてことはない。

 レイが感じたように、エミリは表向きの設定の女ではない。

 フィーネ目線では、箱入りの引き篭もり娘に見えていても、現実は違う。


「アルフレドが先生を連れて行こうとしてるって話してた。で、実際にアルフレドは、レイを連れて行きたいんだよね?」


 エミリがアルフレドに白眼を向ける。

 清廉潔白、誰しもが憧れる容姿をしているアルフレドだが、その容姿と言動が一致していないのだから、エミリは口を尖らせた。

 レイが助けたエミリの父も、男の外見に騙されるなと口酸っぱく言っていた。

 現在、どっちに父性を感じるかと言えば、圧倒的にレイである。

 アルフレドはどうにも子供っぽい。


「バカを言うな。レイは俺の親友だ。親友をわざわざ死地に連れて行くわけないだろ」

「そうかなぁ。レイってアルフレドの先生でもあるでしょ?だったら、頼れる先生も一緒にって思っちゃうんじゃない?」

「それは…そうだ。でも…」

「フィーネを取られるのが嫌…」


 アルフレドの両肩が跳ね上がった。

 エミリは助けられた日に、アルフレドからフィーネのベクトルには気付いている。


 ただ、それとこれとは話が違う、と思っているかもしれない。

 だからこそ、エミリは二人ともを疑っていた。

 そして、朝からのエミリの狂人ムーブは、その辺をハッキリさせるためだった。

 

「俺はレイから冒険のいろはを教わった。あいつは天才だ。道のりどころか、モンスターの特性まで熟知している。しかもこれから先のモンスターもだぞ?魔王軍と戦える仲間についてもだぞ?魔族が攻めてきた時もそうだ。あいつはあれだけ強いのにわざと俺に負けた。そして結果的に俺やフィーネ、さらには村人の多くを救ったんだ。フィーネは賢い。賢い彼女は天才に惹かれる。例え、それまで毛嫌いしていても、だ」


 熱く語り始めた男、アルフレド。

 そして、彼の話す内容は確かにその通り。


「だから、俺はあいつのようになる。だから、レイから学んだんだ」


 レイの厭らしい顔つきを除けば、彼はヒーローである。

 何より、戦えることを教えてくれた先生だ。

 だからこそ、エミリは恩を返したいと思っている。


「それじゃ、やっぱりフィーネは嘘を吐いてたんだ」


 フィーネは嘘をついている。

 アルフレドは本気でレイを置いていくつもりだ。

 彼には魔王軍の侵攻よりもフィーネの方が大事なのだ。


「俺を安心させるため、か。実際、レイはそう思ってこの配置にした。だったら」

「ダメ。レイ君は本当に大切なことを話してる。先のことまで見通してるレイ君が言うなら絶対だよ。アルフレドも沢山教えてもらったんだよね?」


 書きなぐられた文字は地図の裏側まで続いている。

 その動機はフィーネに見合う男になる為。


 アルフレドはバカって言われてたし?


「く…。そう…だな。俺が一番迷っていることまで教えてもらった。それに…」

「それに?」

「俺が光の女神に選ばれたという証拠まで教えてくれた」


 エミリの肩が跳ねる。

 ある意味、自分の直感は正しかったのだとも思った。


「そ、そんなことまで…」

「あぁ。俺自身、今でも震えている。女神像の胸があんなに凄いものだったとは」


 ただ、流石にその言葉には半眼で応える。

 因みに、その時レイも違う意味で半眼だった。

 ゲームのセーブってそこを触ってたのかよ、でもなんか分かる、と肯定的な半眼だった。


「コホン。と、とにかく俺は勇者だった。だから、俺は行かないと駄目なんだ」

「か、過程はさておき、上手いことフィーネを説得しないとダメってことは分かったけど…どうしようかなぁ…」

「俺が世界で一番敵に回したくないのはフィーネだ。はっきり言って俺一人で立ち向かえるか、正直言って怖い。それに俺と約束しているけど、レイは昔からフィーネのことが好きなんだ。だから…」

「ん?ちょっと待ってください。レイ君ってそうなの?」

「あぁ、そうか。レイが演技を始めた後しか知らないのか。前は──」


 エミリは今まで素朴に、素直に両親と生きてきた。

 そして、彼女は人間が如何に不安定な存在かを知った。

 『疑心暗鬼』という意味を言葉よりも先に、彼女は理解した。


 この勇者はバカで、その目は本当に恋盲だ、と。


「あっちが演技?そんな馬鹿な…」

「まぁ、元に戻るかもしれないですけどね!でも、やっぱりこの状況は駄目って分かりました!」

「だが、フィーネは賢い女だ。だからフィーネに直接言ってもはぐらかされる」

「はい。とりあえず私のやるべきことは決まりました!」

「そうだな、俺を信じる必要はない。エミリ、お前はお前が信じる道を進め。 お前の言う通り、今からモンスターが出没しやすいエリアに侵入する。そこからが最後の戦いの始まりだ!」


     ◇


 レイモンドは嫌われキャラである。

 それは公式で決められたものである。

 このゲームを制作した者たち、言ってみれば神々に嫌われ者認定をされたキャラである。

 その世界が今は現実となり、人間として存在している。 

 だから、フィーネはレイが嫌いだ。

 でも、世界に魔物が現れたその日、彼は頼れる人間になってしまった。

 そのギャップがフィーネを狂わせていた。


 そして、レイには避けたい運命がある。

 その運命を避けるため、勇者が最初に立ち寄る大きな街に行こうとしている。


 そう。まだまだ、序盤である。

 

「モンスターの種類と弱点は……」


 この世界の戦闘は単純な確率論ではない。

 それは今までの話で分かったこと。

 そこに新島礼の知識をあわせると、とんでもない戦闘スタイルが確立される。

 そも、ゲームの世界である以上、登場する魔物は人の手でデザインされている。


「ネクタ周辺までで8割も網羅出来てしまうの?」

「名前も違うし、強さも違う。ちょっと角が生えてるパターンもある。…でも基本パターンは同じだ。モンスターは色で強さが変わる。」


 つまり、どれだけ強いスラドンが出現しても、目玉刺突で仕留められる。


「だから、ここで出てこないモンスターも教えておこう」


 もっと形が違うモンスターが出てくる可能性はある。

 フィーネと肩を寄せ合い、イラストを交えながら説明していた。

 だから、レイは気付いていなかった。

 違う意味での敵が、既に動き出していたことに。

  

「あれ? ここって森か? うーん、確かにネクタの街方向ではあるけど…。そうか!流石、アルフレドだ。さっそくRPGの仕組みを理解して、取り入れたってわけか。」

「え?どういうこと? RPGの仕組み?」

「ネクタの街では中盤まで使える武器や防具、そしてアイテムが手に入る。ここの森に出現する成金カラスは金稼ぎにうってつけなんだ。フィーネ、ちょっと試したいことがある。魔法封じ魔法は一定の範囲の空気の流れを止めると、設定資料集に書いてあった。それって魔法を使わない鳥系モンスターにも効果があると思わないか?」


 コマンド形式でない上、オープンワールド風になっている。

 燃やせば上昇気流まで発生する。ある程度の物理法則が存在するらしい。

 だったら、鳥が空を飛ぶのも揚力を利用しているかもしれない。

 いずれ魔法で飛ぶタイプも出てくるだろうが、今はまだ序盤。

 そう考えると、この世界は可能性の塊だ。


 実験するのに嵌ってきたかも。アルフレドにさっさと世界を終わらせて、この世界をもっと楽しもう。

 レイモンドでなければ、この世界を最初から満喫できたのに。


「じゃあ、静寂魔法ボイレスを使えばいいのね!」

「ボイレスは戦闘魔法だ。だから…」

「分かってる。私たちより少し上の空気の流れを止める、でしょ?」


 フィーネは頭が良い。

 ゲーム用語は理解できなくても、感覚でそれを掴み始めている。

 そんな彼女に満足して、レイはニタァァァっと笑った。

 その直前に、実はちょびっとだけ脇腹に痛みを感じていたのだけれど。


「……ぐぽぉ……ぐぽぐぽ。そんなわけないでござる。俺達二人に掛けるでござるよ、フィーネ氏。森の中、エロエロフィーネ氏と二人きり。さぁ、大きな声で生まれたよーーろこーーびおおおおおおおおお‼」

「はぁ?何をいきなり!え……いや‼って、ちょっと待って⁉」


 フィーネは戦慄していた。

 ずば抜けた賢さを持ち、過去の記憶を有する彼女。

 だからこそ、そんなところに辿り着けてしまう。


「いやぁあああ、苦労したぜぇ。ここまで我慢してたんだからよぉ。それを分かってて、俺様についてきたんだもんなぁぁぁ」


 レイモード、それはレイモンドの個性、人間どころか魔物をもイラつかせるユニークスキル。

 この瞬間のフィーネには、レイの今までの発言が、そこへと続くフラグに見えてしまう。


 頭を叩かれた時変わった。

 まともになったわけではなく、頭が良くなっていたとしたら。


 そんなミスリードを引き起こさせるくらい、イラつく存在として作られているのだ。

 

「今までも連れ込まれそうになったことはあった。でも、それをアルフレドが助けてくれたり、村の人が助けてくれたり。だからつまり、二人だけになったのって、もしかして生まれて初めて?」

「そうだなぁ。さっきからずーっと二人きりだぞ。フィーネの方から来たくせに。なーに言ってんだ。さぁ、今は沈黙の魔法を振りまいたんだよなぁ。なーんにも気にせず楽しもうぜぇえええええええ」


 更に言えば、レイもおかしいと思っている。

 自分の意志と反した言葉が次々に溢れ出る。

 そして、ソワソワしているフィーネに、何故か手を伸ばしてみたくなる。


「 待って!二人きりじゃないわ‼前にアルフレドとエミリが…!…い、いない?」


 ただ森に入ったから、視界が悪くなったから、ではない。

 いつの間にか、姿が消えている。


 そして、そもそも


「アルフレドに道を教えていたのはレイ、そしてエミリが懐いていたのもレイ。二人は操られていた…?でも、そんなこと可能なの?ここまでのことが、全部計算だったっていうの?」


 フィーネには思い当たる節がありすぎる。

 レイは未来視に匹敵する知識を手に入れていた。

 それを利用していた。あんな真面目なアルフレドに女神像の胸まで触らせていた。


 そう思えてしまう。


「落ち着けって。フィーネ。ここは男から誘うべき、そう思ってんだろう?なら、ちょっと、そこで休憩するかぁぁぁ?」

「嘘。私。騙され…、いやぁぁぁぁぁぁああああああ‼」


 演技かどうか、そんなことがどうでも良くなるほどのユニークスキル。

 それが彼女に向けて発動される。


「ぐはっぁあ」

「こっちに来ないで‼」


 だから、反射的にフィーネはレイを蹴り飛ばした。


 勿論、ステータスに劣るレイは簡単に蹴り飛ばされてしまうのだが。


     ◇


「良し。我ながら完璧だな。」


 アルフレド…、ではなくエミリの作戦は完璧だった。

 たった三秒で、フィーネをあそこまでミスリードさせた。

 彼は木の影に潜み、レイの脇腹に小石を投擲した。

 その衝撃でレイが脊髄反射を起こして、下卑た行動をとってくれる。

 こんなこともあろうかと、フィーネがしつこいまでにレイの体に覚えさせたのだ。

 因みにそれにエミリが気付いて、勝手に参加していた。


「まさか自分の作戦が使われるとは思うまい。はは、完成している。これは驚きだな。レイがここまで完成していたとはな。」


 確率は五分五分だった。

 だが、レイの言葉を借りれば、この世界は確率では動いていない。

 ポイントを見定めれば、限りなく100%に近づけると勇者のお師匠様は言った。

 だから、最高のタイミングで投擲をした。


「特異体質、と言うべきか。……やはりレイは凄い奴だな。」


 森の中で二人きりの状況。

 二人きりと認識させるのがポイントだった。

 彼女は勝手に、レイが躾けらていたフリをしていたと勘違いする。

 だって、二人しかいないなら脇腹スイッチは誰にも押せない


「こっちが演技だったと知っていれば、もっと違う使い方が出来たのだが」


 アルフレドはこの作戦に参加できていない。

 完全にエミリに乗っかった形だが、あれこそが本来のレイ。

 本来のレイに戻しているだけ。


「これが変化後レイが言っていた確率を乗り越える戦い、……なのだろうな」


 なんて恰好つけているが、やっぱりエミリの案。

 それでもアルフレドは心の底から感動していた。

 ただ、流石に100%には至れなかった。

 もしも自分が変化後レイだったなら、フィーネが蹴り飛ばす方向さえも操れたのだろう。

 そこが少し悔しい。


「いや。変化後レイが変化前レイに投擲をしていたら、変化前レイはあの蹴りさえ避けた筈だ」


 と、アルフレドは自分の不甲斐なさを呪った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る