2−10 もういいの

「三花!」

開いた扉の向こうには美奈さん,そして三花がいた。

「三花!戻ってきて!お母さんたちとお話ししよう!」

黄花の声に三花はにたりと笑った。

でもその笑顔が,笑っているのに苦しそうで。

「嘘つき」

「え?」

三花の呟いた言葉に,黄花も僕も凍りついた。

嘘つきってどういうこと?

「黄花もヒカリも嘘つき。お母さんとお父さんを見つけてくれるって言ったのに」

黄花が息を飲む気配がする。

僕だって三花が何を言っているのか,わからない。

「何言ってるの三花?嘘つきって」

三花に近づいていく黄花を三花は突き飛ばした。

「嘘つき!美奈さんから聞いたの!黄花がもう会えないとか言ったって!」

「何それ⁉︎」

三花の言葉を聞いて,それから美奈さんを見て,全てがわかった。

どういうことなのか。

「美奈…まさかお前…」

黄花が睨みつけても,美奈さんは何も言わずただ笑っているだけ。

「もういいの。2人とも。闇に沈んでしまえ!」

三花の叫びに,僕の目の前が真っ暗になる。

けど,

『希望の 光 一つ舞う 哀れ 無き 魂 また 一つ』

どこからか聞こえてきた声。

すると,いつの間にか真っ白な場所にいた。

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