2−9 新たな出会い

「ヒカリ!ヒカリ,起きて!」

黄花の言葉に,僕は起き上がった。

「黄花?どうしたの?」

「大変なの!緊急事態!」

初めて見る黄花の慌てっぷりに,僕は驚く。

「あれ?三花は?」

僕は今,三花がいないことに気がついた。

「緊急事態は三花のコト!実は昨日の夜中,三花が美奈についていってしまって!」

「えぇぇっ⁉︎」

「このコンパクトが視せてくれたの!とにかく,三花を探さなきゃ!」

そこでようやく僕の目が覚めた。

「ドドドどうしよう!」

慌てまくる僕より一足先に落ち着いた黄花が僕の肩を叩いた。

「ふぅ。取り乱してしまったけれど,きっと三花は自分の心の闇を突かれて,闇に落ちてしまっているはず。だからまずは,三花に光…希望を戻さないと」

三花に希望をもどすか…

それなら…

「三花の両親を探せばいいんだ!」

僕が叫ぶと,黄花は「正解」と,呟いた。

「ヒカリ。まずは三花の両親の居場所を特定して,三花をラッキーストーンとヒカリの言葉で希望を持たせる。そうして,両親に合わせてあげて三花を成仏させる…OK?」

黄花の言葉に,僕は頷いた。

「じゃあまずは,三花の両親を探さなきゃね」う

黄花が頷いて,ささっと走っていく。

僕もそれに続いて,走った。


「昨日の時点でわかったのは,三花の両親が入院しているってことだよね」

「うん。多分ここら辺で1番大きい『夜空星病院』だと思う」

僕たちは地図を見ながら歩き出す。

「ヒカリ。ここから先は,これを掴んでて」

病院の前で黄花から渡されたのは,小さな紙のかけらだ。

「これは?」

「これは神の光。どんなところでも入れるようになるんだ」

黄花の説明を聞きながら,恐る恐る病院に入るための自動ドアを通る。

「すごい!無事に通れた!」

その言葉に,黄花もにっこり頷いた。


「あの!」

黄花が受付によそゆきの笑顔で話しかける。

「あらぁ,可愛いお嬢さん。どうしたの?」

受付のお姉さんは黄花を見てにっこり。

「えっと,おばあちゃんからお願いがあって,おばさんとおじさんにお届け物があるんだ!」

黄花の演技はとってもうまい。しかもしれっと三花の両親の部屋を聞く家族構成まで考えてる。

「えらいわねぇ。どこのお家の人かしら?」

「えっとねーさいなおばさんとおじさんだよ!」

「はーい。じゃあ,109階の1〇9号室でーす」

黄花は笑顔でお礼を言って,エレベーターへ駆け寄った。


「ヒカリ。入るよ」

「う,うん」

いつも元気いっぱいで明るい黄花も,緊張しているようだった。

そして個室のドアに手をかける。

「すいません」

黄花が入ると,中にいた2人の大人は驚いた様子でこちらを見た。

茶色い髪で,オレンジ色の瞳の人。

「さいなさんですよね?」

黄花が名前をとうと,男の人がこちらへ歩いてきた。

「誰?どうしたの?」

僕だったら固まってしまうような迫力だけど,黄花は怯まずに話を続けた。

「突然押しかけて,申し訳ありません。ですが,どうしてもお話ししなければならないことがありまして」

その言葉に,男の人の眉が,ぴくりとはねた。

「娘さん…三花さんと,話していただきたいんです」

するといきなり,後ろに横渡っていた女の人がこちらに詰め寄ってきた。

「三花が,あの子に会えるの!?」

「はい。信じられないかもですが,三花さんは,幽霊になってもあなた方と最後にお話ししたいと望んでいます。なので…待っていてくれませんか?」

女の人は,驚いた様子だったけれど,ベットに戻った。

「わかった。あの子に会えるんなら,どれだけでも待つわ」

「ありがとうございます」

そう言って部屋を出ようとした,その時!

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