2−6 調査開始!
「ねぇ三花。三花の親は,この夜空町にいるの?」
僕がそう聞くと,三花は困ったように笑った。
「う〜ん。わかんない。その辺の記憶ないんだよね」
そっかぁと僕は三花に返事をすると,黄花が僕の頭にポンと手を置いた。
「安心してヒカリ。絶対にこの町にいる。空からよく見てたから」
「じゃぁ!黄花は三花の両親のことわかるの⁉︎」
期待も込めて叫ぶと,黄花は困った顔。
「えっと。ボクはわかんない。ただ,『さいな』っていう標識のかかった家に,毎晩電気がついてたから」
黄花の声のトーンが少し暗め。
見ると,三花も少し残念そうに足元を見ていた。
「よし!三花のおかーさんとおとーさん探しに…」
「「「レッツ!ゴー!」」」
3人で手を上げて叫ぶと,山を駆け降りていった。
「よし。ボクとヒカリが行ってみるから,三花はボクのコンパクトの中にいて」
黄花がそう告げると,三花は少し不満げにえー,と言った。
「はぁぁ。みーか。あなたの顔は,町中に行方不明のプリントでバレてるんだよ?その姿で歩いたら,行方不明の少女が見つかった!って大騒ぎになっちゃうよ」
そんなこと,と笑って言おうとした三花の言葉が詰まる。
「はーい」
何かを思い出したのか,三花はコンパクトに入った。
「黄花…まずは,このお店からだよね」
黄花は頷いて,八百屋さんの中に入っていく。
「いらっしゃい!なんでも揃ってるよ!」
店の中は広くて,野菜がいっぱい並んでる。
けど,今日きたのは野菜を買うためじゃない。
「あの。さいなさんのご両親が,今どちらにいるのかご存じありますか?」
黄花はよそゆきのキラッとした笑顔で,八百屋のおばさんに話しかける。
おばさんは,作業をしていた手を止めた。
「さいな…さんか…。そこの人なら,さっきここで野菜を買って,東の方へ行ったよ。旦那さんだけだったけどね」
おばさんは少し悲しそうな顔で東の方を見る。
「さいなさんはね,12年前,娘さんが行方不明になっちゃったんだよ。花のように笑う子で,いい子だったんだけどね。寂しいよ」
おばさんは店の奥を指差した。
そこには,100種類以上もある,三花の顔が描かれたポスター。どのポスターにも,行方不明,私たちのさいな三花がいなくなってしまった!などと描かれている。
人気者だったんだな…
隣を見ると,黄花もしんみりした顔で,ありがとうございましたと呟いた…
そこから先も,東の方や,南の方にあるお店で,三花の両親のことを聞いたけど,行き先を知る人はいなくて…
どのひとも,同じような反応だった…
その日の夜は,橋の下で,布団を敷いて3人で横に広がって寝た…
「ねぇ,三花…」
「ん?なーに?」
三花は笑顔でこっちを向いた…
その笑顔が見ているこっちまで辛くて…
「絶対に見つけるから」
勇気を出して伝えた時,暗がりでも見えた…
三花の目に,涙が浮かんでいるのを…
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