2−2 ラッキーストーン

「えぇいっ!」

僕・藤堂とうどうヒカリは,前にいるおばさんに向かって石を投げつけたところだった。

僕は,一ヶ月ほど前・天使の女の子・黄花きかと希望をなくした人々に希望を届けている。

黄花は,僕の大事なパートナーで,いつも解決のために導いてくれている。

今は,色々な町を回って,人々に希望を届けているんだ。

ラッキーストーンで希望を取り戻したおばさんから出てきた光を,黄花は自分のコンパクトでカポッと挟んだ。

「よし。ヒカリ。この町はおしまい。次の町へ行こう」

「うん!」

黄花の言葉に頷いて,僕は歩く。

黄花のは寝るようなリズムに続いて,僕も山道を登っていく。

ここ一ヶ月でだいぶ体力がついてきた。

最初の頃は,黄花よりもだいぶ遅れてしまったり,次の日筋肉痛になったりとしたけど,今はもうだいぶ慣れてきた。

こんなに歩いても,何もない。

黄花が,地図を見て呟いた。

「ヒカリ。次の町は夜空町よぞらちょうってところだよ。いつも以上に濃い,強い闇を感じる。急ごう」

黄花の目が,赤く光って山から地上を見下ろした。

黄花の目は,たまに左が赤く光る。それが不思議だけど,そんなこと聞く暇もなかった。

それより…

夜空町。僕の住んでた星野町ほしのちょうとおんなじくらい夜空が綺麗に見える。夜空の町で夜空町…

とっても平和で,129年間・犯罪が一つも起こらなかった町だ。

「黄花。行こう」

「うん」

そう呟いた黄花の目は,少し寂しそうに揺らいでいた。

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