1−11 三里のみた現実

「うぅっ…」

わたし・三里は,泣きながら家へ帰る道を歩いていた。

いつもはワクワクしながら小走りで帰る道だけど,今日は下を向きながら歩いて帰っている。

理由は簡単。国語の授業の,ある『事件』のせいだ。

今日は,国語の時間に自分の名前の由来の発表会があった。

わたしのお母さんとお父さんは,産婦人科のお医者さんで帰ってくるのが遅い。

だから,聞けなかった。最近は,さらに忙しいみたい…

それで講師に聞けなかったこと,そして理由を言った。

そしたらクラスメイトの陽太くんが…

「お前のことが嫌いだから帰ってくるのが遅いんじゃねーの?本当は2人でカラオケとか言ってたりして」

って言った。だからわたし,言ったんだ

「違うよ。二人ともお仕事で忙しいんだよ!」

って。そしたら陽太くんは…

「じゃぁなんで,みりの,『み』は『実』や『美』じゃなくて数字の3なんだよ。いらないからテキトーにつけたんじゃないの?」

って。わたしは,泣くのを我慢して言い返した。

「違うよ!きっと意味があるんだよ!」

「じゃぁ名前の由来聞いてみろよ」

それでわたし,何にも言えなくなっちゃったんだ。

そしたら陽太くんたちが,ほらみろってわたしの頭をこつんって指で突いた。

「聞いてみろよ。できないんだろ?お前」

わたし,気づいたら自分の席でちっちゃくなってた。

陽太くんに言われたことが悔しくて。悲しくて。

あと,お母さんとお父さんに聞けなかったのが,寂しくて。

「ただいま」

わたしは誰もいないうちの玄関に声をかけた。

電気をつけて階段で自分の部屋のベットにうずくまった。

「うっ。ううっ」

枕がしめる。でも,そんなの気にしていられない。

なんでわたしの家はお父さんにもお母さんとも話せないの?

寂しいよ。悲しいよ。

もっと話たい。


全部を見て,ようやくわかってきた…

これは,三里の気持ちなんだな。

実際に見てみると,三里の気持ちが痛いほど伝わってくる。

僕も,こんなことを言われたら三里みたいになってしまうだろう。

それくらい,辛い『いじめ』だったんだ。

僕はこの日,休んでいて理由はよくわからない。

けど,親友の瑛人に聞いた話とは,だいぶ違う。

瑛人は,三里が名前を聞かなかったせいで,自分の順番が最後になって閉まったから,陽太が怒ったって言っていたのに…

三里が名前の由来がわからなかったのは,わざとじゃない。ただ,親が帰ってくるのが遅かったせいだ。

まさか,こんなふうに伝言ゲームのズレが,大変なことになるなんて。

きっと今のは,三里が見せてくれたんだ。助けてって言いたいから。

でも,三里がこれを見せてくれたおかげで,三里に届ける石。決まったよ。

パレットの石を見て,優しく触れる。

すると,三里へのラッキーアイテムが頭に浮かんできた。

よし。三里,待っててよ。

僕が絶対,三里に希望を届けてみせるから。

そう決心したと同時に,僕の目の前が真っ白になった。

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