1−5 からっぽの瞳

「あれはっ」

僕はやっと行き着いた星野町で驚きの声を上げた。

住人が倒れている。

しかもその倒れた全員の目に光がない。

光も意思も何もない,空っぽの瞳だ。

「黄花…これが…」

僕は掠れた声で黄花の方を見た。

「うん…近くにいいる」

僕は歩いていく。

しばらくして,よく知っている人を発見した。

「おじさん!」

僕はおじさんに向かって必死で走った。

黄花が持ち上げたおじさんの顔を見て,僕は思わず叫んでしまった。

朝,あったはずなのに…!おじさんは空っぽの瞳で僕たちを見つめている。

「ヒカリ。この人から,たくさんの闇を感じる。普通の時に闇が濃い人ほど,こうなった時の闇の量も多い」

今日の朝も挨拶をしてくれたおじさん…本当は,心の中ではやみがたくさんあったのか?一体なんで…

「黄花…まずは試しにやってみよう…」

「そうだね。じゃあやってみよっか」

僕はポシェットから,ラッキーストーンとビーズを取り出した。

「おじさん!しっかり!」

僕はおじさんの体を揺する。するとおじさんが起き上がって,こちらを見た。

「おや…ひかりくんか…もうだめだね…こんなことしても,みんなに笑顔なんて届けられるわけないじゃないか…野菜なんて…みんな嫌いなんだから」

おじさんの口から漏れる,暗い言葉…

「でも,でもっ!おじさんのお野菜,とっても美味しいよ!僕はおじさんのお野菜大好きだよ!」

「もうだめだよ…野菜なんて育てても,意味がない…さっきも…女の子がいったんだ…おじさんのお野菜おいしくないねって」

そんなっ!誰だよそんなこと言ったの。

僕は怒りを抑える。

「ひかり。早く石を選んじゃお」

「うん」

僕はラッキーストーンの入ったパレットをじっと見つめた。

あれ?そう言えば僕,鉱石の意味とかくわしいじゃん!これもさっき黄花からもらったラッキーストーンの力か?

よし。こう考えたら頭がスッキリしてきたぞ。

おじさんは野菜を育てるやる気を失ってるな…

ってことは…

僕は一つの緑っぽい石を手に取った。

「ヒカリ!これ!」

黄花が糸を投げてくれた!

僕はキャッチしてさっきの石とビーズを通していく。

ビーズは,石に合わせて緑と透明の二種。

最後に石を入れてキュッと紐を結んだ。

「できた!」

「じゃあ、それをおじさんに向かって投げて!」

その言葉に、僕はそれを,おじさんに向かって投げつけた。

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