第17話 石言葉?知るか、んなもん。

あのあと、部屋から食堂に行き、朝食を食べ始めたのだが、

「これって、石言葉があるうとったよなぁ。どーゆーのなんやぁ?」

口をもごもごさせながら、カイトに聞くジン。

やはり、ジンも指輪が気に入ったのか、まだ気になることがあるみたいだ。

「あ~、確か、ジンくんの石は、レモンクオーツだったよな。

 レモンクオーツの石言葉は、前向きなエネルギー、明るい未来に向かう、らしい。」

恐らく、彼の父から送られてきた手紙であろうものを覗きながら、ジンからの問いに答える。

「…あれ、キミたち、まだ朝ご飯食べてなかったの?」

突然、後ろから、妙に聞きなじみのある声がした。

「なんだ、ビャクか。」

「『なんだ』ってなんなの。ただ声かけただけなのに。」

「ごめんて。…で、ビャクは、もう朝食、食べた?」

首を真後ろに曲げて後ろに立つジャージ姿のビャクヤと話すカイト。

…カイト、首やわらけぇな。

「もう食べたよ。先に部屋、戻っとくね。」

「お、おう。」

呆れたような口調で話すビャクヤに、カイトが、聞く。

「ビャク、今日は、調子…平気か?」

一瞬の沈黙を挟んで、ビャクヤが答えた。

「…別に。いつも通り。」

その声は、いつもの声より低く、かといって、俺がビャクヤをからかったときに出したような声とは、少し違った低さだった。

「…そう。無理は禁物だからな。」

カイトも、少し間をおいて、いつもより真剣な声色で返した。

ビャクヤは、「わかってる。」と、束ねた白髪をなびかせながら、食堂を出て行った。

「…。」

そんなビャクヤの様子を、少し悲しそうな、寂しそうな表情で見つめるカイト。

「…そ、そういや、オレっちの石だけやなくて、レイとカイトさんとビャクヤさんの石にも石言葉があるんよなぁ!どんなんなんやぁ?」

気まずい空気を何とか明るい方向に持って行こうとするジン。

「え!?そ、そうだな、オレの石は、"ブルートパーズ"という石らしい。で、レイくんの石は、"オブシディアン"。石言葉は…、ふふっ。さすが父さん。」

「は?急になんでそんなにニヤついてんだよ。どした。狂ったか。」

「…酷くないか。レイくん。」

「知るか。」

「え~。」

「…オレっち空気かよぉ。」

なんて、テンポのいいギャグのような会話を繰り広げていたのだが、

「あのさ、キミたちいつまで食べてんの。いい加減、授業に遅れるよ。」

「…あれ、ビャクヤ、部屋に戻ったんじゃなかったのか?」

「はぁ?部屋にはとっくに戻ったし、準備も終わったし、なんなら今から寮出るんだけど。」

突然現れたビャクヤをよく見ると、さっきまでのジャージではなく、制服を着ていた。

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