幕間

幕間1 呪いの子。

暗い。寒い。痛い。臭い。怖い。恐い。

ここは、どこだ?

…そうだ。ここは、

牢屋だ。

俺のための。俺を、飼うための。

「――――!!————!!!!」

誰だ?怒ってる。

俺が、怒らせてしまったのか。

俺が、"呪い子"だから。

腹に、脚に、腕に、顔に、体中に、鈍い痛みが、襲う。

…この痛みは、"とうさん"だ。

"とうさん"の力は強いから、一発一発が、すごく、痛い。

痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。いたい。

でも、これは当然だから。

俺は、苦しくて、当然だから。

「おい!!何回言ったらわかんだよ!!起きろっつってんだろ!!この能無し!!」

怒声。怖い。暴言。怖い。罵声。怖い。

こわい。

「とうさ…」

「誰が喋って良いと言った!?黙れよ!!お前のその声も!顔も!髪も!目も!全部!!気持ちわりぃんだよ!!」

「ごめっ、なさっ…」

頭に鋭い痛み。なに?

あぁ、髪を、引っ張られて、上を向かされてるんだ。

「いいか?お前は"呪い子"だ。誰からも必要とされない。誰からも愛されない。

 全員に気味悪がられ、恐れられ、怖がられ、嫌われ、遠ざけられ、殺される。

 それが当然だ。当たり前だ。それはおかしいことではない。

 なぜならお前は"呪い子"だからだ。

 俺はそんな"呪い子"に生きる意味と衣食住を与えてやってるんだ。

 感謝だけじゃ足んないよなぁ?

 お前の感謝だけじゃ足んねぇから、こーやって役割を与えてやってるんだ。

 頭、上がんねぇよなぁ?

 お前は俺のこと。なんて呼ぶべきだったか、覚えてるよな?」

よく見えない目で、目の前の男を見て、掠れた声で、発する。

「いぇす…。…"おーなー"…。」

「わかったならもっかい殴られてろ!!おまえは誰のもんだ!?」

「おー…なっ…の、ですっ…。」

「お前はなんだ!?」

「おっ…なっ、ぁ、の、いぬっ、で、す…。」

痛い。痛い。

痛みが、だんだん増していく。

俺をつ力がだんだん強くなっていってるんだって、わかった。

痛い。やだ。痛い。痛い。痛い。いたい。

鞭で叩かれながら、オーナーに教えてもらったことを、言う。

言わないと、もっと痛いから。殺されてしまうから。

両手首に、両足首に、首につけられた鎖が、じゃらじゃら鳴る。

食い込んで、痛い。首は特に、息が、しづらい。

"あの人"に会いたい。

"あの人"に会うために、俺は生きていなきゃいけない。


あ、終わった。

オーナーが、"部屋"を出ていく。

"おしおき"が、終わった。

痛みが、まだ残ってる。

血が、見える。

横になってるのに、血が見える。

手、目の前に持ってきてるからか。

手が、傷だらけ。手を広げる。

血まみれ。傷だらけ。

これ、何の傷だろ。

あ、切られたのか。

痛い。体が、寒い。

心が、寒い。

助けて、


"にぃさん"…。

薄暗かった視界が、ほんとうのまっくらになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る