第10話 急すぎんだろ。

暮会も終わり、帰ろうとしたところ、

「ねぇ、一緒に帰るよ。」

ビャクヤに声をかけられた。

「は?お前、自宅通学じゃなかったのかよ。」

この学園には寮があって、自宅が遠い生徒や、身寄りがない生徒は寮から学園まで通うことができる。

俺は初等部のころから寮通学だったが、白髪を見かけたことはなかったから、てっきりコイツは自宅通学だと…

「いや、まぁ、うん。自宅通学だったんだけど、今日から寮通学に切り替えられたみたい。」

「急すぎんだろ。」

そのとき、急に何かがビャクヤに抱きついた。

「ついでに、オレも寮通学になったぞ~。」

「なんでだよ。」

…何かと思えば、カイトか。身長高ぇし重そうだからビャクヤが潰れそうだ。

本人ビャクヤも「ちょっ、カイ、重い!」と、必死にカイトを退かそうとする。

しかし、カイトはそんなのお構いなしに、

「言ってなかったっか?オレ、ビャクの"専属騎士"。」

ニヤッと笑ってそう告げる。

「あぁ、専属騎士ね。専属騎士…。なんだそれ。」

いったん納得はしたものの、専属騎士とはなんぞや的な疑問が頭の中で発生する。

「専属騎士はね、簡単に言えば、専用の騎士、ボディーガードみたいなものだよ。」

ビャクヤが、呆れた顔をしながらも丁寧に教えてくれる。

「オレはビャクの専属騎士。つまり、ビャクのお世話係だな!」

「カイ!?お世話係は違うでしょ!?」

「えぇ?お世話係だろ?」

「てか早く退けてよ!重いんだって!」

言い合う2人は置いといて、

「つまり、ビャクヤとカイトは主従関係ってことか?」

「そゆこと!」

親指を立ててグッドポーズをするカイト。

もしそうなら、

「…敬語使わなくて大丈夫なのか?」

主人にタメ口、しかも説教とかからかうとか、首とばね?

「僕が許可した。幼いころからの付き合いだし、父上も了承済みだよ。」

やっとカイトを退かすことに成功したビャクヤが、目を伏せて言う。

「てかお前、専属騎士って、すっげぇ貴族じゃねぇか。」

「まぁね。一応"公爵"らしい。」

「こら。"一応"でも"らしい"でもない、公爵。…あ、ちなみにオレの家は公爵騎士。代々ビャクたちの一族の専属騎士を務めてるよ。」

「貴族じゃねぇか…。」

「ん~…。公爵騎士はどちらかというと、貴族というより貴族に仕える家来みたいな感じだな。」

「カイには住み込みで働いてもらってたけど、僕が寮に移ることになったから、カイも僕についていく形になったみたい。」

「ほんとに専属とゆーかボディーガードなんだな…。」

主人が引っ越すからついてくとか過保護かよ。

「てことで、僕とキミ、相部屋らしいから、よろしくね。」

「オレも隣の部屋だから、なにかあったら遠慮なく頼ってな!」

「…は?」

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