第9話 金髪と黄髪

「ちょ、ちょっとお待ちくださる!?」

入学式が終わり、教室まで戻っている時だった。

ビャクヤとカイトはなんか先生に呼ばれてどっか行った。

ジンはなんか「便所行ってくるから、さき戻っとってぇ!」って言ってどっか行った。

んで、のんびり帰ってたら、この金髪少女に話しかけられたってわけ。

俺のとこまで急いで来たのか、おろしてある、ゆるくウェーブのかかった綺麗な金髪が揺れている。

金髪・碧眼、"三文字"。コイツもやはり、かなり良いところのお嬢様なのだろう。

…そんなお嬢様がなぜ俺に声をかける?

え?俺のこと嫌ってなかったけ?

「な、何の用だよ。」

やっぱりきつい言葉で返してしまう俺。ほんっっっっっっとーにクズ。

「さ、先ほどビャクヤさまやカイトさまと話されていましたが、どういうおつもりで?神聖なる儀式の途中でしたのに。」

…コイツは何に怒っているんだ?

俺がビャクヤやカイトと話したこと?それとも、俺たちが入学式の途中で話したからか?いやでも、話したとはいえ、小声だったし。

「お前は何に怒っているんだ?」

「は、はぁ!?」

わからないことは聞くに限る。

なのに逆に彼女の癪に触るようなことを言ってしまったらしい。

「あなた方は、入学式の意味をご存じで?」

…いや知らんけど。

「入学式とは、これからの学生生活において、全力を尽くす、清く正しくあるということを誓う、大切で、神聖な儀式ですわ。」

透き通った碧眼で、俺を睨む。

「そんな神聖な場を汚すのは、いかなる理由があろうと許されないはずですわ…!」

透き通った碧眼から、雫が落ちる。

その瞬間。

「…すまん。入学式が神聖な場であることは知っとった。」

金髪の奥に、黄色いパーマが見えた。

「ジ、ン…?」

ローラが驚いた表情をして振り向く。

コイツらどーゆー関係だよ。

「ローラがそーゆー場でふざける人間が嫌いなのも知っとった。本来であれば、オレっちが止めるべきやった。」

そして、ジンはこう続けた。

「やから、ローラ。レイを責めんといて。」

ジンは、ローラに近づきながらさらに話を続ける。

自分ローラのことも、責めんといて。お前はなんも、間違ってへんから。」

「ジン…っ。」

蒼い瞳から、また雫が零れ落ちる。

ローラより明らかに背が高いジンは、かがんでローラの涙を拭いながら、

「ごめんなぁ。泣かせるつもりはなかったんやけど、また、泣かせてしもうたなぁ。」

と、少し泣きそうに微笑んだ。

拭っても拭っても、ローラの瞼からは雫があふれてくる。

「レイ、すまんけど、センセーにローラとジンは保健室行ったって伝えとってくれん?ローラ落ち着いてから教室戻るわ。」

「ん。りょーかい。」

「さんきゅなぁ。」

未だ泣き続けるローラの頭をなでながら、「あっち行こか。」とさりげなくエスコートするジン。イケメンかよ。

ジンとローラが見えなくなってから、教室に戻った。

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