第6話 ついつい
「そーいや名乗っとらんかったなぁ!オレっちは"ジン"言うねん!よろしゅうなぁ!」
一人称個性的…。
「珍しい名前だな…。二文字か…。お前、どこ出身?」
名前が二文字。名前の文字数は、出自を示す重要なもの…らしいが、なぜ文字数で決めるのかは知らん。
四文字が最高ランク、三文字が中間ランク、二文字が最低ランクだ。
「"お前"てwオレっちには"ジン"っちゅう名前があるんやけどなぁ」
「じゃあジン、お前、どこ出身?」
そう聞いたとき、一度聞いたような声が聞こえた。
「見なさい、ローラ。呪い子と"貧乏黄髪"が傷の舐めあいしているわよ。」
「そ、そうですわね。」
先ほどまでは生き生きとしていたローラが、今は少し
「ッ…。」
ジンがうつむいてくしゃりと顔を歪ませる。
「どした、ジン。」
「い、いやぁ…。なんでもないで!そうそう、どこ出身かって話やったなぁ!」
眉をひそめた笑みを浮かべたジンは、話を進めた。
「オレっちは地方の"地下農村"出身でなぁ…。"負け
"地下農村"。その名の通り主にどこかの裕福な村か貴族たちの邸宅の地下に築かれた農村。裏切者、罪人だけでなく、それらの血縁、家族、親族などを閉じ込めて、死ぬまで奴隷のように働かせるためだけの、ゴミの掃きだめ。
"ルーザートラッシュ"はその中でも特に劣悪で過酷な環境だったと聞いたことがある。だが、そこは確か数年前に…
「そこで、しゃべることも、休むことも、逆らうことも、何もかも許されないまま、村が"放火廃棄"になってまってなぁ。母さんも、父さんも、兄ちゃんも、姉ちゃんも、村のみんな全員死んだのに、オレっちだけ生き残ってん。もうどうしようもなくなってなぁ、聖魔メルトリータ帝国の首都、メルターナまで来て、この学園に入ったんや。」
明るそうなジンの裏には、涙があふれ出そうなほどの悲しい過去があって、ジンの強い決意が隠れていて。
そして、そんなジンの話を少し聞いて思った。
「じゃあ俺ら似た者同士だな。」
「へ?」
「俺も地下の牢獄出身だ。しゃべることも、休むことも、逆らうことも、何もかも許されなかったまま、ここまで来た。」
ポカンと口を開けて呆けているジンを置いて、俺は続けた。
「俺も"二文字"だ。これが正しい例えなのかは知らねぇ。どうだっていい。」
そう言い終えた後も、ジンはしばらく呆け顔を続けていたが、数十秒後、ニカッと笑い、
「せやな!オレっちたちは"地下出身仲間"やなぁ!」
嬉しそうに俺たちの関係に名前を付けた。
そのまま少し話していたら、
「キミたち、なにしてるの?」
猫かぶりスマイルを浮かべたビャクヤが俺たちの前に立っていた。
「?…いやなにしてるって言われても、話してただけだ。」
「ふ~ん。別にそれはいいんだけど、」
少し黒い笑みを浮かべるビャクヤに、俺とジンの頭にはてなマークを浮かんだ。
「もうすぐ入学式なんだけど?」
「…あ」
「急がないと遅れるよ。」
「い、急げぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
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