第100話

「よし!行きましょうか!」



机から降りて私に向けて手を差し出す。



「どこに、?」



「決まってるじゃない。るかくんのところよ」



「無理だよ、」



そう言った私に桃ちゃんは真剣な顔で言う。



「鈴はそれでいいの?このまま諦めていいの?諦めたくないから、前に進みたいから私に話してくれたんじゃないの?」



桃ちゃんの真剣な言葉にはっとする。



「よくない、ぜんぜんよくないよ。このまま終わりなんて嫌だ。私はちゃんとるかくんと話がしたい。気持ちを伝えたい」



それで本当に終わってしまったならちゃんと諦めることができる。差し出されたままの手に自分のを重ねる。



「勝手に終わりを見せたのは彼なんだから、1回くらい鈴も勝手をしてもいいでしょう?」



悪戯を思いついたように桃ちゃんは笑う。そんなふうに桃ちゃんが笑うのは珍しいから私もつられて笑ってしまう。やっぱり桃ちゃんはすごいな。



手を引かれながら「だいすき」と伝えれば、「伝える相手が違うわよ」って言われてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る