高3 9月
第99話
Hanaとはあの日以降何回か遊んだけれど何も変わることなく楽しく過ごした。あの日のようにLucaについては何も言わないし、私から何か言うこともない。
だけど、私の中ではずっとあの日Hanaが放った言葉が残ってる。自分だけではどうすることもできないまま時間だけが過ぎていく。
私が何か悩んでいることはきっと桃ちゃんにはお見通しだったはず。分かっていて桃ちゃんが何も言わなかったのは、私から言ってくれることをきっと待っていたんだと思う。だって彼女は私のことをよく分かっているし、尊重してくれているから。
そんな桃ちゃんだからこそ悩みを打ち明けようと思った。ずっとずっと悩んでいたこと。
決意が変わってしまう前に桃ちゃんに連絡をする。明日の朝、聞いて欲しいことがあるから付き合ってほしいと。そうお願いすれば、いいよって言ってくれた。明日必ず言うと決めて眠りにつく。
そして迎えた次の日、いつもは遅く登校するけど今日だけは30分も早くついた。私からお願いしといてくるの遅いとか1番したらいけないこと。30分も早く着いたのに桃ちゃんは既にそこにいた。
「おはよう、桃ちゃん。もしかしたら授業遅れちゃうかも、ごめん」
「そんなことはいいのよ。鈴より大事なことなんて学校にないもの」
「ありがとう」
そう言いながら笑う。
「行きましょう」
「うん」
普段使われていない教室に入り隣同士で机に座る。どうやって切り出せばいいのか分からず黙ってしまう。必ず言うって決めたのに、意気地ないなぁ。
上手く言い出せない私のことを桃ちゃんは待ってくれる。だから勇気を出して伝える。
「あのね、Hanaと遊んだ日に言われたの。“Lucaのことを諦めないで”って、それを言われてからずっと考えてたの」
そんなに考えなくても答えは出てたんだ。ずっと簡単で単純なこと。
「私はやっぱりるかくんのことが好き。この恋を終わらせようと頑張ったけど、私の中からなかなか消えてくれなくて、苦しくて、どうすることもできなくて、」
たった2文字の感情。それを認めるのが怖かった。諦めたかった。楽になりたかった。
「“諦めないで”って言われてももうこの気持ちを伝えることはできないけれど」
結局関係が終わってしまうならあの時言っておけばよかったと後悔してももう遅い。時は戻らない、そう自重気味み笑えばずっと黙って聞いてくれていた桃ちゃんが言葉を放つ。
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