第88話

「あの子がネット恋愛を初めて1ヶ月くらいかな、嬉しそうに私に言ってきたの。"恋が叶った"って。幸せそうに話すあの子を見て私も嬉しくなった。片想いしてるあの子を見てきたから」



だけどそれが間違いだった。嬉しくなったらだめだった、止めなきゃいけなかった。あの時止めてさえいればあの子はあんな姿にならなくて済んだのに。



「付き合い始めて2ヶ月くらいかな?彼氏に会いに行くって言って学校を休んだ日があったの。私は事前に聞いていたから先生に言う時も口裏を合わせた」



今頃楽しんでるかなって思いながら授業受けてた。



「家に帰ってどうだったのかなってメッセージを送ったの。その日に返信はなかった、幸せにしてるんだろうなって思って気にせずその日は寝たの。でも朝になっても彼女からの返信はなかった」



「疲れてるのかなと思って普通に学校に行ってSHRが始まるの待ってたら先生に呼ばれたの。あの子はまだ学校に来ていなかった」



「先生には彼女について聞かれた。"昨日家に帰ってないみたいだけど何か知ってるか?"って。その言葉を聞いた時驚いたの。だって当日に帰るって彼女は言ってたから。だから帰ってないことに驚いて先生に話したの」



ひとつの事に夢中になると何も見えなくなるのはあの子の悪い癖。だけど約束を守らなかったことは無い。



「そしたら先生の顔色はすぐ変わって沢山質問してきたの。どこに行ったのか、誰とあったのか、もちろん答えられることは答えたよ」



でも私にできることは何も無くて、ただただあの子からの連絡を待つだけ。先生もあの子がいまどんな状況なのか教えてくれるわけもない。だから、私はあの子が無事でいてくれることを祈ることしか出来なかった。

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